『レルル! アルル! 気をつけて! あいつは黒焔の太陽だけど本体の方じゃない!』

『本体の方じゃないだって? だったらあいつは』

『あいつは黒焔の太陽の目玉。黒焔の目だよ』

『っ!』
 
マールの言葉に二人は驚いた反応を示した。

「アル。黒焔の目ってなんだよ? 黒焔の太陽とは何か違うのか?」

『……いや、同じだ。あの黒焔の目は黒焔の太陽の目の役割を果たしていたんだ。その目で高い魔力を持った者を見つけ出し、その者を食らおうとして大口を開き飲み込もうとする。まあもっと簡潔に言うなら、あいつは暴食の粒子たちが集まって出来た怪物だってことだ』

「……怪物」
 
アルの話を聞いた俺は目の前に浮かんでいる黒焔の目をじっと睨みつけた。

『マール。まさかセイレーンの魔力を奪われたのですか?』

『……うん、そうだよ。クラウンはあの黒焔の目を大きくさせるには、魔剣の持ち主の魔力もほしいって言っていた。だから……気をつけて!』
 
あれを大きくさせるために、魔剣の持ち主の魔力も必要なのか……。

だったら今この場で一番高い魔力を持っているのは間違いなくこの俺だ。
 
おそらくセイレーンが俺に訴えかけてきていたってのが、俺の魔力を奪われないようにしてほしいってところだろう。
 

まだまだ小さい姿をしている黒焔の目だけど、俺の魔力を吸収したらどこまで大きくなるのか分からない。

これは思った以上に慎重に行かないと駄目みたいだな。

「どうしたのかな? ブラッド君。君の力はそんな物じゃないだろう?」
 
するとクラウンが俺を煽るようにそう言い放った。

その言葉に少なからず苛立った俺は、クラウンの顔と黒焔の目を交互に見ながらアルに問いかける。

「なあ、アル。トトはどうやって黒焔の目を退けたんだ?」

『……あいつは自分には特別な力は何一つないと言っていたが、あいつにはあいつにしか持っていない力を一つ持っていた』

「トトにしかない力だって?」

『ああ、そうだ。あいつは生を持ってこの世に生まれた瞬間に、精霊たちの頂点に君臨している七大精霊たちと契約を交わしていたんだ』

「な、七大精霊と契約していただって?!」
 
おいおい嘘だろ?! 

七大精霊って言ったら、精霊たちの元祖じゃないかよ! 

それをトトは生まれた時に契約を交わしていたって……。