ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

ボロボロと涙を流すアルファの姿を見た俺は、両拳に力を込めて地面に強く打ち付けた。

『アムール様……まさかセシルは』

『……ああ、もう……』

 頭の中で二人の声を聞きながら、俺はさっき右目で見たセシルの体の状態の事を思い出す。
 
クラウンに雫を酷く傷つけられた事によって、雫に収まっていたはずの魔力が暴走を引き起こして、そのせいでセシルの体はもうボロボロだった。

体内で内出血が起こり、内蔵の多くは既に死んでいる。

ただ僅かに残っている彼女の命を繋いでいた細い糸の三本が、ギリギリセシルの命を引き止めているような状態だった。

しかし暴走した魔力は、今もなおセシルの体の中を巡り破壊を続けている。

だから……後は時間の問題だった。

糸の数と羽の数からして、おそらくセシルの羽は彼女の命その物だったのかもしれない。

それが断ち切られればセシルは今直ぐにでも……。

✩ ✩ ✩

「あ、アルファ……。私が……小さい頃に言ったこと……覚えてる?」

僕は頬に伸ばされた彼女の手を掴んで優しく力を込めて握りしめた。

そしてその言葉に小さく頷いて見せる。

「……もちろんですよ。忘れるはずが……ないじゃないですか。僕の嫁さんに……なりたいんですね?」

「……うん、そうだよ。でも……それはきっと……叶わないよね?」
 
そう言ってセシルは涙を流しながらぎゅっと目と瞑った。
 
確かにこの現状じゃ彼女の願いは叶わない。

もうセシルも僕にも時間がなかったから。

でも――

「そんなこと……ないですよ」

「えっ……?」
 
僕はそう言って優しく微笑む最後の口づけを彼女に落とした。

そんな僕に応えてくれるように、セシルもまたゆっくりと目を閉じた。

唇を離した僕は、彼女の額に自分の額をくっつけてから誓いの言葉をたてる。