ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「……に、さ……さま」
 
俺は右目を使ってセシルの体の状態を見る。

しかし直ぐに見る事をやめた俺は苦笑した。

「ああ……セシル。お前の大好きな……兄ちゃんだぞ」

「っ!」
 
その言葉にセシルは軽く目を見張ると、俺と同じ緑色の瞳を大きく揺らしながら再びボロボロと涙を流し始めた。

「お兄様……ごめんなさい。私……前に……お兄様を殺そうと!」

「……それは全然良いんだ。そんなことより俺の方がお前に酷いこと言っただろ? 化物だってさ……。だから……ごめん!」
 
アルファの側まで来た俺は、そっとセシルの体を下ろして寝かせる。

「ブラッドさん……」
 
隣でアルファの呼ぶ声が聞こえてそちらに目を向けて俺は目を見張った。

アルファの体の怪我を見て、どれだけアルファが妹のために戦ってくれたのか悟った俺は、アルファの体に治癒魔法を掛け始める。

「……ブラッドさん。僕の体に治癒魔法を掛けても無駄ですよ。あなたの魔力が無駄に消費させられるだけだ」
 
その言葉に俺は目を細めて、アルファに向けていた手を下ろす。
 
アルファの言う通り治癒魔法を掛けても、傷口から流れる血が止まる事はなかった。

そして左足首に走っているヒビ割れを見て、俺は更に表情を歪めて唇を噛んだ。

「俺は……お前を許す事は出来ない。でも……お前は妹のために……戦ってくれた。その事については感謝している」

「……と言いましても、僕は何も出来なかった。この命を掛けて守ると誓ったセシルでさえ、僕は……守りきる事が出来なかった。
 
そう言ってアルファはそっとセシルの体を抱き上げた。

「……セシル」

「……アルファ……」
 
セシルは震える手を伸ばして彼の頬に手のひらを当てる。

そんなセシルの姿にアルファは表情を歪めると涙を浮かべた。
 
そして彼女の背中に残っている三枚の内の一つが、黒く染まり切ると黒い砂と化して消えていく。

「セシル……ごめん! 君を……君の事を僕は……守れなかった!」