ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

でも………何かの奇跡が起きてセシルが生きていたんだとしたら……。
 
そこで俺はシエルの姿が脳裏を過ぎった。

「…………なあ、ベータ。お前の体に俺は治癒魔法を掛けてやった。それだったら、お前は俺の質問に応える義理があるはずだ」
 
俺は殺意のこもった目でベータを瞳に写す。

「シエルは……セシルなのか?」
 
その質問にレーツェルとアルは驚く。

しかしベータは特に変わった様子は見せず、ただまっすぐ前を見つめて一言。

「ああ、そうだ」
 
そう一言俺に言い放った。
 
俺は今直ぐにベータの胸倉を掴みたい衝動に駆られた。

しかし何とか必死にそれを抑えて、魔剣アムールに魔力を注ぎながら両足を思い切り踏み込んだ。

「さよならだ、セシル」

「やめろぉぉぉぉぉ!! セシル!!!!!」
 
勢い良く飛び出した俺は、二人の間目掛けて魔法を放つ。

愛の絆(アモール・プロメッサ)!!」
 
俺が放った魔法に気がついたクラウンは、セシルから離れると後ろへと大きく飛んだ。

そして俺は彼女の目の前に降り立ち、アムールの切っ先をクラウンへと向ける。

「おい……どういうことか……説明してもらおうか。クラウン!!」
 
俺は殺気を放ちながらギロリとクラウンを睨みつけた。

✩ ✩ ✩

「ブラッド君……」
 
土煙が上がる中、クラウンは目を細めて俺を見てきている。

しかし俺はそんなクラウンを気にするよりも、後ろに居る彼女に視線を送った。
 
セシルは俺と目が合うと大粒の涙を頬に伝らせた。

そして少し遠くで倒れているアルファに視線を送った後、俺は光の玉(ライトボール)を使って、彼女の体を拘束していた黒い手たちを引き離し、倒れかける彼女の体を支えて抱き上げた。

「……っ」
 
そして妹の体に刻まれた魔法陣を見下ろして強く歯を噛み締めた。

血で染まった背中に治癒魔法を施しながらアルファの方へと歩いて行く。