ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

『ほ、本気なのですか?! いくらブラッドでも黒焔の太陽を一人で相手に出来るはずがありません!』
 
レーツェルの言う通り、俺一人では黒焔の太陽を倒す事は出来ないだろう。

トトやアルたちが倒せなかった存在を、たった一人で相手するなんて無謀な事だとも思う。でも俺はここで諦めるわけには行かないんだ!

「確かに無謀な事なのかもしれない。でも俺はここで足を止めるわけには行かないんだ。オフィーリアのためにも!」

『……分かった、お前の言う通りにしよう』
 
サファイアはそう言って元の姿に戻ると、俺たちの側から離れた。

『ブラッド……。では私たちも出来る限りサポートさせて頂きます!』

「ああ、頼んだレーツェル!」
 
その時目の前を走っていたベータの体が、再び大きく左右に揺れた。

「なっ!」
 
そのまま前に倒れ込んで行く彼女の体を支えるため、俺は一気にベータとの距離を縮めて後ろからお腹に腕を回して抱きとめた。

「……っ。お前……着いて来てたのか?」

「当たり前だ。お前ならクラウンの居場所を知っているからな」
 
別にベータの後を着いて行かなくても、この右目を使えばクラウンの居場所なんて直ぐに突き止める事が出来る。

でも余計な魔力は使いたくないんだ。

だったら今からクラウンのところへ向かおうとしている人の後を着いて行った方が、自分のためにもなる。

「一応言っとくけどな、お前がそうやって走れるのは、俺がお前に治癒魔法を掛けてやったおかげなんだぞ。でもな、俺がお前に施した治癒魔法は傷の痛みをなくす程度のものだ。だから傷は完全に塞がっていない。それ以上無理したら血が足りなくなって死んでも知らねぇぞ」

「……さっき言ったはずだ。私は……あの人のためなら死んだって構わないと」

「だから! …………はあ、分かった。俺はもう何も言わねぇ。人のお節介を無駄にするなら、最初からお前何かに無駄な魔力を使うんじゃなかったな」
 
俺は深々と溜め息を吐きながら、彼女のお腹に回していた腕を離す。

「…………」

するとベータはじっと俺の顔を見てきた。

「……何だよ?」
 
まさか今更お礼でも言うつもりなのか? とふとそんな事を思っていたら。

「その顔……お前の顔を見ていると、あの頃のクラウン様の顔が脳裏を過る」