「…………ねえ、レーツェル」

『……はい』
 
私はレーツェルの鞘を握りしめるとボロボロと涙を流した。

「あの人の言う通り……無理なのかもしれません」
 
そう小さく呟いた私はその場に座り込んだ。

そして震えている自分の手を見下ろす。

「残りの寿命で……魔剣五本を見つけられるはずがないんです。だって……私の未来は真っ暗だから」

『……オフィーリア』
 
私も普通の人間だったらなら、自分の人生を全て使ってでも魔剣を集める旅に出たと思う。

でもそれは未来があるからだ。
 
でも今の私には……未来が見えない。
 
真っ直ぐ歩き続けても明るい未来が待っていることなんてない。

歩き続けたって先に待っている物は、死と言う名の呪いだけなのだから。

『では、彼の元へ戻りますか?』

「……えっ?」
 
レーツェルの言葉に私は伏せていた顔を上げる。

彼女は私の前の目に浮かぶとそのまま言葉を続けた。

『彼ならあなたと一緒に未来へ歩んでくれます。だってあの人は、オフィーリアと一緒に未来を歩みたいと、言ってくれたのですから』
 
その言葉に私の中で彼の言葉が流れる。

【諦めるのはまだ早い】

【必ず一緒に生きよう。オフィーリア】

【この先、お前と生きるためには、死ねないんだ……】

【お前は好きだ……誰よりも愛してる】
 
ブラッドとのたくさんの思い出が蘇り、彼の笑顔が浮かんだ拍子に涙が溢れた。

「ブラッド……あなたに……会いたいです!」
 
やっぱりあなたが側に居てくれないと、私一人じゃ何も出来ない。

あなたが側に居てくれたから……私は。

『ブラッドと別れてから、彼に会う前のあなたに戻ってしまいましたね。泣き虫だったあの頃のあなたに』

「そ、れは……言わないで」
 
こんな泣いている姿なんて、ブラッドに見られなくない。

泣き虫で弱い私の姿なんて、ただ幻滅させるだけだ。