「なぜって聞かれても、クラウンの魔力を察知したからここに来たんだよ。それ以外にここへ来る理由なんてないだろ?」

「……っ。クラウン様の魔力を察知しただと」
 
その言葉にベータは数秒考え込み、何かを思い出したのか青い顔を浮かべると、俺に向けていた剣を力が抜けたようにそっと下ろした。

そんなベータの姿に俺は首を傾げた。

「何かに怯えている……のか?」
 
ベータは青い顔を浮かべて、何かに怯えるように体を小さく震わせている。

こいつがこうなるってことは、どうやら中でとんでもない事が起こっているって思っていた方が良いみたいだな。

「ベータ。お前が俺と喋りたくないのは分かる。でも俺はここで一体何があったか聞きたい」

「……っ」
 
ベータは話したくないのか、表情を歪めると俺から視線を逸した。

そして軽く歯を噛み締めてから、握っていた剣を鞘に戻す。

そして再び俺に視線を戻してから口を開く。

「お前がここに来た目的は、オフィーリア様の敵を討つためなのか?」

「……もちろんその気持の方が何十倍にも強いな。だけど俺はそれ以外にも、あいつをこの世界のトトにさせるわけには行かないと思っているんだ。あんな自分の強欲のためだけに罪のない大勢の人を犠牲にして来たあいつが、この世界のトトになったところで誰も救済なんかされない。ただ闇に飲み込まれるだけだ。だから俺はあいつから星の涙の欠片を奪い返して殺す。その為だけに、俺はここへ来たんだ」
 
だからそれ以外の事なんて正直どうでも良いと思っていた。

星の涙の欠片を奪い返して、その後にクラウンを殺せれば後はどうなっても良い。
 
今やるべき事の全てを終えたら、俺は三百年生き続けなければならない。

だからそのための準備だってしないといけないんだ。

「……お前は憎くないのか? オフィーリア様を殺したクラウン様の存在が」

「……憎いに決まってんだろ! あいつのせいで俺とオフィーリアは人生を滅茶苦茶されたし、大切な家族だって殺された! そしてあいつは……! いや……オフィーリアの殺したのは………………俺だ」
 
俺は拳に力を込めて歯を強く噛み締めた。

でも直ぐに力のこもった拳を解いて真っ直ぐベータの姿を見る。