「私は……あなたを……トトとして」
 
その言葉の先をクラウン様が待っていた時、彼女の瞳に光が戻った。

「私は……あなたを……トトとして……【絶対に認めません】」

「……………なに?」

「セシル……?!」
 
セシルの言葉にクラウン様は鋭い目を浮かべた。

そして殺気を放つと彼女に理由を尋ねる。

「どうしてだ? 君の意識は完全に俺が支配したはずだ。それだと言うのに、なぜ今だ意識が残っている?」

「……そんなの……決まっているじゃない」
 
そう言ってセシルは顔を上げると言葉を続ける。

「これは……私の意思……。いいえ、みんなの意思だからだよ!」

「みんなの……意思だと?」
 
【みんなの意思】と言う言葉に、僕は犠牲になったエア末裔たちの事を思い出した。

まさか彼らが……?

「私は絶対にあなたをトトに認めたりなんかしない! それが私の答えだよ!」

「くっ!!」
 
するとセシルの図頭上に浮かんでいた星の涙の欠片は、彼女から離れるとクラウン様の元へと戻って行く。

そんな星の涙の欠片を乱暴に握りしめたクラウン様は、怒りに身を任せて彼女へ手をかざし、黒い手たちを使って彼女の背中にある、生命の翼へと伸ばした。

「っ! まさか!」
 
嫌な予感が僕の中で過ぎった時、生命の翼を掴んだ黒い手たちはそれを勢い良く毟り取り始めた。

「ああああぐっ!」
 
羽が抜かれた箇所はどんどん黒く染まっていく。

その度に彼女の体に激痛が走るのか、彼女は何度も苦痛の叫び声を上げた。

「まったく!! どいつもこいつも俺の言うことを聞かないクズばかりだ!! どうして俺の思い通りに行かない!!」
 
クラウン様はセシルの髪を掴むと、彼女の顔にぐっと自分の顔を近づけた。

「あうっ!!」

「言え! 今すぐに言え!! 俺がこの世界のトトだと!!」

「……ううっ……。絶対……言わない!」
 
しかし彼女は断固として頭を縦には振らなかった。

そんな彼女の姿に更に腹が立ったのか、クラウン様は次々と彼女の生命の翼を毟り取って行く。

「生命の翼がむしり取られる度に、君の体には激痛が走るはずだ。それはなぜだか分かるか? 生命の翼と君の雫は見えない魔力の糸で繋いでいる。それが一本一本引きちぎられるたび、毟り取られた生命の雫は死んでいく。だから君の命も削られていくのさ」

「っ!!」
 
その言葉に僕は大きく目を見張った。