ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「……クルル……」
 
クリエイトの姿にマールは軽く目を細めると、構えていた拳を解いて話をする姿勢へと入る。

「ねぇ、クルル。聞いても良いのかな? レルルとアルルの事を裏切ってまで、どうしてそんな男に力を貸そうとするのかな?」

「……君は……相変わらずその名前で……僕の事を呼ぶんだね」

「うん、だって今はクルルじゃん」
 
わたくしも歌う事をやめて、二人の様子を後ろから伺っていた。

「それともクルルが話すよりイルルが話してくれるの?」

「……別に……どっちでも良い。それに……あの二人にも言ったけど、僕は……最後まで見届ける義務がある」

「それはエアのため?」
 
マールの質問にクリエイトはゆっくりと頭を縦に振った。
 
そして左手に星の涙の欠片を出現させると、それをわたくしたちにも見えるように前にかざした。

「彼女は……最後に願った。この世界のトトを探してって……だから僕は彼女の願いを…叶えてあげないと……いけない」

「……それがエアが最後に望んだ事だとしても、こんなこと間違ってるって言って怒ると思うな。レルルやアルルだって怒ってた。だから私だって怒ってるんだからね!」

「……君の気持ち……とか、そんなものどうでも……良い。僕にとって……そんな物より、エアが一番……大切だから」
 
クリエイトはそう言うと左手の中にある星の涙の欠片を、指先でそっと撫でてあげた。

「エアは……幸せになる事が……出来なかった。……だから僕が、私が……彼女を幸せにしてあげたいんだ。だから……オフィーリアとか言う紛い物は死んで当然の人間だ。彼女は……エアじゃない。だから彼女より先に……幸せになんて……させるものか!」
 
その言葉にわたくしとマールは目を見張った。

「……今のお言葉をブラッド様がお聞きになられていたら、きっとあなたの事を許さないと思いますわね」

「……別に……良いよ。彼は……どうせオフィーリアより、エアの事を選ぶんだから。エアこそが……ブラッドを救済し……愛してくれるんだから」
 
クリエイトは最後にそう言うと、元の魔剣へと姿を戻してからクラウンの手の中へと戻って行った。

「マール……」
 
マールは怒りで肩を震わせながら、元の魔剣へと姿を戻してわたくしの手の中に戻ってきた。

『ごめん……セイレーン。アタイでもクルルとイルルの説得は駄目だったよ』

「マールはよくやりましたわ」
 
そう彼女に言葉を掛けたわたくしは、クラウンたちへと視線を戻した。

「さあ……勝負の続きと行きましょうか?」

「…………ああ、そうだね」
 
クラウンは伏せていた顔を上げると、右目に魔力を注いで赤い魔法陣を不気味に輝かせる。