✭ ✭ ✭
「なぁ、セイレーンよぉ。あんたはクラウン様を止めるためにここへ来たんだったよなぁ?」
「ええ、そうですわ」
ここへ来る少し前、わたくしはガンマにとある話を持ちかけられた。
「だったらあんたに頼みがある」
「……頼み?」
また頼み事……ですか。そう内心呟きながらわたくしはガンマの言葉を待った。
「あんたにはぁクラウン様がシエル様を使って、この世界のトトに選ばせようとした時に邪魔をしてもらいたい」
「邪魔ですの? 助けてほしいではなく、邪魔だけで良いのですか?」
「ああ、それだけで構わねぇ。それにクラウン様と戦うのは俺たちだぁ。それは俺たちがやらなくちゃいけねぇ事だからよぉ」
「……そうですか」
てっきりわたくしの力を貸して欲しいって、言われるのかと思っていましたわ。
今のガンマやアルファだけでは、クラウンを殺す事は難しいでしょうから。
「分かりました。しかしタイミングはわたくしが決めますので、その間はどうぞクラウンと思う存分に戦ってください」
「ああ、そのつもりだ」
そう言って彼はわたくしから離れると、アルファの元へと駆け寄って行った。
✩ ✩ ✩
わたくしはクラウンの右目に気づかれないよう、気配を殺しながらその機会を伺っていた。
そしてクラウンがシエル……いえ、セシルと呼んだ方がよろしいのかしら?
セシルを使って自分をこの世界のトトに選ばせようとした時、魔剣マールに魔力を注いで水の槍を放った。
「まさか……君がここに来るとは思っていなかったよ。魚人族のセイレーン」
「あら、そうでしたの? 予想する事がお好きなあなたの事ですから、てっきり予想出来ていた物だと思っておりましたけど」
わたくしの言葉にクラウンは苛ついたように表情を歪める。
まあ彼の気持ちは分からなくもありませんわ。
ようやく欲しかった力が手に入る直前で邪魔をされたのですから、誰だってそんなことされたら怒るものですわ。
クラウンはわたくしの手の中にある魔剣マールへ視線を移動させると、自分も腰から下ろしている魔剣クリエイトを鞘から抜いて見せる。
しかし既に魔剣クリエイトの情報を得ているわたくしにとって、その存在は別に怖いものではありません。
むしろマールやレーツェル以外にも目覚めている守護者に出会う事が出来たのですから、これは喜ばしいこと。
「まさかあなたがこのわたくし相手に最初から本気で来ると言うのです? その魔剣クリエイトの力を使って、わたくしに幻術でも掛けるおつもりですか?」
「……っ。クリエイトの存在をどこで知った!?」
「ん〜……そうですわね」
わたくしは魔剣マールに魔力を注ぎながら考える素振りを見せる。
そして――
「ふふっ。覚えていませんわ」
そう一言言い放ってから魔剣マールの刀身を横に振るうと、水の雫たちが辺りに飛び散る。
そしてそれは海の生物に姿を変えると、真っ直ぐクラウンへと飛んで行く。
「なぁ、セイレーンよぉ。あんたはクラウン様を止めるためにここへ来たんだったよなぁ?」
「ええ、そうですわ」
ここへ来る少し前、わたくしはガンマにとある話を持ちかけられた。
「だったらあんたに頼みがある」
「……頼み?」
また頼み事……ですか。そう内心呟きながらわたくしはガンマの言葉を待った。
「あんたにはぁクラウン様がシエル様を使って、この世界のトトに選ばせようとした時に邪魔をしてもらいたい」
「邪魔ですの? 助けてほしいではなく、邪魔だけで良いのですか?」
「ああ、それだけで構わねぇ。それにクラウン様と戦うのは俺たちだぁ。それは俺たちがやらなくちゃいけねぇ事だからよぉ」
「……そうですか」
てっきりわたくしの力を貸して欲しいって、言われるのかと思っていましたわ。
今のガンマやアルファだけでは、クラウンを殺す事は難しいでしょうから。
「分かりました。しかしタイミングはわたくしが決めますので、その間はどうぞクラウンと思う存分に戦ってください」
「ああ、そのつもりだ」
そう言って彼はわたくしから離れると、アルファの元へと駆け寄って行った。
✩ ✩ ✩
わたくしはクラウンの右目に気づかれないよう、気配を殺しながらその機会を伺っていた。
そしてクラウンがシエル……いえ、セシルと呼んだ方がよろしいのかしら?
セシルを使って自分をこの世界のトトに選ばせようとした時、魔剣マールに魔力を注いで水の槍を放った。
「まさか……君がここに来るとは思っていなかったよ。魚人族のセイレーン」
「あら、そうでしたの? 予想する事がお好きなあなたの事ですから、てっきり予想出来ていた物だと思っておりましたけど」
わたくしの言葉にクラウンは苛ついたように表情を歪める。
まあ彼の気持ちは分からなくもありませんわ。
ようやく欲しかった力が手に入る直前で邪魔をされたのですから、誰だってそんなことされたら怒るものですわ。
クラウンはわたくしの手の中にある魔剣マールへ視線を移動させると、自分も腰から下ろしている魔剣クリエイトを鞘から抜いて見せる。
しかし既に魔剣クリエイトの情報を得ているわたくしにとって、その存在は別に怖いものではありません。
むしろマールやレーツェル以外にも目覚めている守護者に出会う事が出来たのですから、これは喜ばしいこと。
「まさかあなたがこのわたくし相手に最初から本気で来ると言うのです? その魔剣クリエイトの力を使って、わたくしに幻術でも掛けるおつもりですか?」
「……っ。クリエイトの存在をどこで知った!?」
「ん〜……そうですわね」
わたくしは魔剣マールに魔力を注ぎながら考える素振りを見せる。
そして――
「ふふっ。覚えていませんわ」
そう一言言い放ってから魔剣マールの刀身を横に振るうと、水の雫たちが辺りに飛び散る。
そしてそれは海の生物に姿を変えると、真っ直ぐクラウンへと飛んで行く。



