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それから聖母の愛大聖堂で僕とブラッドさんは再び戦った。

そして僕はまた酷い怪我を負ったと言うよりも、酷い火傷を負わされた。
 
何とか左胸辺りだけは避けて攻撃は受けたけど、あの火傷が思ったよりも酷かったのか、僕の体はベータやガンマに比べたら再生する速度がどんどん落ちていった。
 
魔力だって二人に比べたら徐々に少なくなって来ている。

それは僕の体の中にある雫が弱ってきている証拠だってクラウン様は言っていた。
 
だからクラウン様は僕に【あまり魔力を使いすぎないようにね】と言ったんだ。
 
今思えばあの人は僕とブラッドさんを戦わせる事で、僕のことを弱らせようとしていたのかもしれない。

だってあの人は後に僕が裏切る事を知っていたんだ。
 
そう思えば納得の行く部分が多いんだよ。

セシルの護衛として僕を付けたのだって、オフィーリアさんの元へ僕を行かせたのだって、聖母の愛大聖堂でブラッドさんを殺すように命じたのだって、全ては僕の存在が邪魔になると思っていたからなんだ。

「ガンマ。もし僕が途中で倒れたり動きが鈍くなったと思ったら、その時は迷わず僕のこと殴るなり蹴るなりしてもらっても良いから、僕に活を入れてほしい」

「それやった後になって怒んねぇのかよぉ?」

「さあね。そもそもそれを蒸し返す頃にはもう、僕は死んでいるだろうさ」
 
僕は深く深呼吸してクラウン様へと右手をかざす。

そんな僕の姿を見たガンマも軽く笑みを浮かべると剣を構えた。

そして僕たちは同時に動いた。

「黒の精霊よ、その力を我に貸し与え、目の前の者の殺せ、黒い槍(セイブルランス)!!」
 
背後に黒い槍が姿を現すとそれはクラウン様へと向かって行く。

その後に続いてガンマも思い切り足を踏み込むとクラウン様に向かって行った。

「ふっ……まだ足掻くつもりなのかな? いくらやっても、結果は目に見えていると言うのに」
 
そう言ってクラウン様は目の前に左手をかざすと、黒い守り(セイブルシールド)を貼ろうとする。

その姿を見た僕は直ぐに次の詠唱を始める。

「黒の精霊よ、無の精霊よ、その力を持って目の前の者の体を封じよ、封印(シール)!」

「っ!」
 
すると封印の魔法によってクラウン様の体はピタリと動きを止めた。