「そうかぃ。じゃ、仲良く一緒に行ってやるよ」

「ガンマ……。ベータは良いの?」

「あ〜……。良いんだよ、あいつは。あんなクラウン様の姿見たら気絶するだろうからな」

「ベータに限って気絶はないと思うけど……」
 
でもきっとベータは絶望すると思う。
 
僕はもう人からの裏切りにはなれているからどうってことはない。

ガンマだってきっと平気だろう。

でもベータは違うんだ。

誰よりもクラウン様の事を心から信じていたベータだからこそ、裏切られたと知った時のショックは大きいと思うんだ。
 
だからガンマはこの場からベータを引き離したんだ。

あんなクラウン様の姿を見せたくなかったから。

「おい……アルファ。一つ聞いても良いか?」

「なに?」
 
ガンマは僕の耳に近づけると確認を取るように聞いてくる。

「お前のその体……あとどのくらい保ちそうなんだぁ?」

「…………さぁね。でもそんなこと、僕にとってはどうでも良いことなんだよ。今の僕にとって大事な事は、この体に限界がやって来たとしても、何が何でも動かしてセシルを絶対に助けるってことだけなんだよ」
 
だから彼女を助けられるのなら、僕は死んだって構わないんだ。

✩ ✩ ✩

「アルファ。あの男に酷くやられたものだな」

「…………べ……た……」
 
あの日、何年も行方をくらませていたオフィーリアさんの魔力、と言うよりも星の涙の魔力を察知したクラウン様は、僕にオフィーリアさんの事を回収するように命令を寄越した。
 
だから僕はクラウン様に指定された場所へ向かった。

そしたらその場所は、クロードさんたち一家が住んでいた屋敷のある場所だった。
 
最初屋敷の姿を上から見下ろしていた時、誰かが新しく家でも建てて住んでいるんだろうと思った。

だから躊躇うことなく、オフィーリアさんを誘き出すために僕は強力な魔法を使った。
 
そして案の定、僕の魔法によって屋敷やその周辺の木や草花たちは吹き飛び、オフィーリアさんは誰かと一緒に外へと出てきた。

「はあ……まったく」
 
彼女を見つけるのに一体何年掛かったのやら。

でもこれであいつを殺して回収すれば後は――
 
そう思いながらオフィーリアさんを回収しようとした時、僕はオフィーリアさんの側に居る彼の姿見たて心臓が大きく跳ね上がらせた。
 
魔力を使い過ぎた事によって髪の色は白髪へと変色していたけど、彼の整った容姿と目を見た時に僕は直ぐに、目の前に居る男がブラッドさんだと気がついた。
 
クラウン様に与えられた右目のおかげで発作はなくなり、体も丈夫になったようにも見えて、魔力もあの時に見かけた頃に比べれば、上手くコントロール出来ているようにも見えた。
 
でも僕が彼を知っている事を、ブラッドさんに知られるわけには行かなかった。

だから僕は――

「お前は誰だ!」

「それはこっちのセリフだよ。てか君だれ?」
 
僕は彼を知らないふりをしたんだ。