「翼を使って……空を飛んでいた時……」
セシルはそう小さく呟くと、振り返って自分の背中に生えている翼を見つめた。
そして青ざめた顔を浮かべると僕に縋り付くように腕を力強く掴んでくる。
そして体を震わせて涙をボロボロと流しながら僕の顔を見上げた。
そんな彼女の体を僕は強く抱きしめる。
「ううっ……アルファ。私……私!」
彼女が何を言いたいのか、僕にはちゃんと分かっていた。
「ごめん……セシル。記憶が戻った君には、ちゃんと知っておいて欲しかったんですよ。僕たちが君に何をしてしまったのか、そして君に背負わせてしまった多くの人たちの命の事を……」
知らないで生きるのと知って生きるのとでは全然違う。
だから僕は今ここで話す事で、彼女には知って生きてほしいと思った。
それが彼女にとって酷く残酷で辛いことだと分かっていても、目を背けないで欲しかったんだ。
だから僕は彼女に許してもらうつもりはない。
僕も目を背けたりなんかしない。
それが僕に出来る命を奪ってしまった人たちへ対する償いだから。
「さあ、シエル。君はどうするつもりなのかな?」
「……っ!」
「真実を知ってしまった君は、その体で生きたいと思えるのかな? 自分の存在を否定しないで生きて行くことが出来るのかな?」
「……それは」
クラウン様はそう言うと僕たちに向かって左手をかざす。
すると背後で揺らめいている黒い手たちはピタリと動きを止めると、行き先の方向を僕たちへと定めてから一斉にこちらへと伸びて来る。
僕はセシルの体を抱き上げて何とかその場から後ろへと大きくジャンプする。
その隙きにガンマも剣を構えると、僕たちへと伸ばされている黒い手たちを斬り捨てていく。
しかし斬り捨てられた黒い手たちは直ぐに元の形を取り戻すと、二体三体へと分裂して行く。
「ちぃっ! これじゃあキリがぇねなぁ!」
「無駄だよ、ガンマ。その子たちは斬るだけ無駄さ。斬ったところでただ数を増やして行くだけだ。それだったらいっそ、斬らない方が君たちのためだとも思うけど?」
「……っ。くそっ!」
後ろへ大きくジャンプした僕は、黒い手たちから距離を取った場所へと着地する。
しかしその拍子に左胸辺りに激痛が走った。
「うぐっ!!」
「あ、アルファ……?」
僕はセシルを抱えながら左胸辺りの服を鷲掴んだ。
くっそ……こんな時に!
そう思いながら額に嫌な汗が滲み出る。
視界がぐらりと大きく揺れたように見えて、僕は何とか意識を保ちながら目を細める。
「アルファ……やっぱり変だよ! どこか怪我したの?! それとも体調が悪いの?!」
彼女は目尻に涙を浮かべて心配そうに僕の顔を見上げてくる。
そんなセシルに心配をかけたくない僕は、大きく深呼吸してから彼女に苦笑して見せた。
「大丈夫……ですよ。ただ……思ったよりも魔力を激しく消耗しすぎただけですから」
そうセシルに言いながら、またこちらへと伸びてくる黒い手を避けるために、僕は左へと大きく飛んだ。
そんな僕の姿をクラウン様は嘲笑うように見てきている事に気がついた。
ああ……やっぱり、あの人にはもう気づかれているのか。
そんな事をふと思いながら瓦礫の上へと着地した時、瓦礫の下から無数の黒い手たちが姿を現した。
セシルはそう小さく呟くと、振り返って自分の背中に生えている翼を見つめた。
そして青ざめた顔を浮かべると僕に縋り付くように腕を力強く掴んでくる。
そして体を震わせて涙をボロボロと流しながら僕の顔を見上げた。
そんな彼女の体を僕は強く抱きしめる。
「ううっ……アルファ。私……私!」
彼女が何を言いたいのか、僕にはちゃんと分かっていた。
「ごめん……セシル。記憶が戻った君には、ちゃんと知っておいて欲しかったんですよ。僕たちが君に何をしてしまったのか、そして君に背負わせてしまった多くの人たちの命の事を……」
知らないで生きるのと知って生きるのとでは全然違う。
だから僕は今ここで話す事で、彼女には知って生きてほしいと思った。
それが彼女にとって酷く残酷で辛いことだと分かっていても、目を背けないで欲しかったんだ。
だから僕は彼女に許してもらうつもりはない。
僕も目を背けたりなんかしない。
それが僕に出来る命を奪ってしまった人たちへ対する償いだから。
「さあ、シエル。君はどうするつもりなのかな?」
「……っ!」
「真実を知ってしまった君は、その体で生きたいと思えるのかな? 自分の存在を否定しないで生きて行くことが出来るのかな?」
「……それは」
クラウン様はそう言うと僕たちに向かって左手をかざす。
すると背後で揺らめいている黒い手たちはピタリと動きを止めると、行き先の方向を僕たちへと定めてから一斉にこちらへと伸びて来る。
僕はセシルの体を抱き上げて何とかその場から後ろへと大きくジャンプする。
その隙きにガンマも剣を構えると、僕たちへと伸ばされている黒い手たちを斬り捨てていく。
しかし斬り捨てられた黒い手たちは直ぐに元の形を取り戻すと、二体三体へと分裂して行く。
「ちぃっ! これじゃあキリがぇねなぁ!」
「無駄だよ、ガンマ。その子たちは斬るだけ無駄さ。斬ったところでただ数を増やして行くだけだ。それだったらいっそ、斬らない方が君たちのためだとも思うけど?」
「……っ。くそっ!」
後ろへ大きくジャンプした僕は、黒い手たちから距離を取った場所へと着地する。
しかしその拍子に左胸辺りに激痛が走った。
「うぐっ!!」
「あ、アルファ……?」
僕はセシルを抱えながら左胸辺りの服を鷲掴んだ。
くっそ……こんな時に!
そう思いながら額に嫌な汗が滲み出る。
視界がぐらりと大きく揺れたように見えて、僕は何とか意識を保ちながら目を細める。
「アルファ……やっぱり変だよ! どこか怪我したの?! それとも体調が悪いの?!」
彼女は目尻に涙を浮かべて心配そうに僕の顔を見上げてくる。
そんなセシルに心配をかけたくない僕は、大きく深呼吸してから彼女に苦笑して見せた。
「大丈夫……ですよ。ただ……思ったよりも魔力を激しく消耗しすぎただけですから」
そうセシルに言いながら、またこちらへと伸びてくる黒い手を避けるために、僕は左へと大きく飛んだ。
そんな僕の姿をクラウン様は嘲笑うように見てきている事に気がついた。
ああ……やっぱり、あの人にはもう気づかれているのか。
そんな事をふと思いながら瓦礫の上へと着地した時、瓦礫の下から無数の黒い手たちが姿を現した。



