私たちはガンマの姿を見て目を見張った。

「……ガンマ……私のせいで……」
 
彼の左腕を見て涙を流した私を見たガンマは、ヤレヤレとでも言うように溜め息をこぼす。

そして側まで歩いて来ると、私の頭の腕に大きな手を置いてから髪をわしゃわしゃと掻き回した。

「が、ガンマ……?」

「何でお前が謝るんだぁ? これはお前のせいじゃねぇだろがよぉ」

「ち、違う! これは……私のせいだよ! アルファが私を守って大怪我を負ったのだって、ガンマが左腕を失ったのだって、全部……全部私が言う事を聞かなかったから!」

「……そいつぁ違うぞ、シエル様。……いや、セシルって呼んだ方が良いかぁ?」
 
ガンマは頭から手を放すと、私たちの横を通り過ぎるとクラウンに向かって剣を構える。

「今回の事は全部お前のせいじゃねぇ。悪いのは全部俺たちとクラウン様だ」

「えっ……」

「……っ」

「俺たちはあの人の子供でありながら、色々と止めてやる事が出来なかったぁ。俺たちがちゃんとあの人を止める事が出来ていりゃ、お前さんが家族を失うことも、こんな事に巻き込まれる事もなかったんだぁ」
 
そのとき私の中でお父様とお母様、そして大好きなお兄様と一緒に過ごした日々の光景が脳裏を過ぎった。

クラウンおじさんに連れられてやって来た、アルファと初めて出会った時の大切な思い出も。
 
そして今のクラウンを本当のパパとして心から慕っていた時の私の記憶。

面倒くさいと言いながらもずっと側に居てくれたアルファの姿や、私を本当の妹のように可愛がってくれたベータや、仕事帰りにはいつもお見上げを買って来てくれたガンマたちの姿を思い出した時、私はぎゅっと唇を噛み締めた。

「……ガンマの言う通り、あなた達がちゃんとクラウンを止めていてくれれば、私がこんな事に巻き込まれる事も、大好きだった両親を失う事もなかったのかもしれない。……でも、でもね!」
 
私は一歩前に出て、この場にいる全員に声が聞こえるように大口を開けた。

「私は……私は今でもみんなの事が大好きだよ!! みんなが自分たちのせいでって言っても、私はそんなこと咎めたりしないし、責めて罵倒したりなんかしないよ! だって……みんな私の家族なんだから!!」
 
これは私の心からの気持ちだった。

どんなこと言われたって、どんなことされたって、私にとってみんなは大切な家族なんだよ。

みんなと過ごしたあの日々は、私にとって大切でかけがえのない思い出なんだよ。

だから私は……こうなってしまった自分を拒絶することはない。