ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「大人しく言うことを聞いていれば、こんな事にはならなかったと言うのに」
 
クラウンは右手を私にかざすと、今度は足首以外にも私の両手首に黒い手を巻き付かせる。

そしてそのまま私の体をゆっくりと持ち上げてから、じっと私の顔を見上げてくる。

「ふっ。なかなか良い眺めじゃないか」

「……」
 
もう……これで良いのかもしれない。

私がちゃんと言う事を聞けば、これ以上アルファたちが傷つく事もない。

私がこの世界のエアになれば私は私じゃなくなるから、アルファだって私を守る理由がなくなる。
だったらいっそ――

「……せ、しる」

「っ!」
 
その名前を呼ぶ声が聞こえた時、私の心臓が大きく高鳴った。

「まさか……馬鹿なこと……考えてない……ですよね?」
 
私は瞳を大きく揺らしながら後ろを振り返る。

そしてクラウンもゆっくりと立ち上がった人物の姿を見て眉を寄せた。

「……まだ生きていたのか?」

「……アルファ!」
 
アルファは酷く息を切らせながら、両足に力を込めて何とか頑張って立っているように見える。

そんなアルファの姿に私の胸は締め付けられた。

「もう……良いよ、アルファ。これ以上私なんかを守ったら、本当にアルファが死んじゃうんだよ!」

「それでも構わないんだ!!」

「……っ」

アルファは額の血を拭うと、優しい笑みを浮かべて言う。

「僕は……君が好きだ。だから僕は……この命は君のために使うと最初から決めていた!」

「……ううっ……やめてよ、アルファ!!」

「絶対にやめない!! だってこれが僕に出来る、君への唯一の償いだから!!」
 
彼の言葉に私はボロボロと涙を流した。
 
私はそんなこと望んでない! 

私はアルファには生きてほしい! 

死なないでほしい! 

だって私も……アルファが大好きだから。

「もう話しは良いかな? 俺だってとっとと先に進みたいんだ」
 
クラウンはそう言ってアルファへと手をかざした。その姿を見た私は焦って口を開く。

「お願い! アルファを殺さないで!! 何でも言うこと聞くから、エアだって何だってなってあげるから! だから……アルファだけは殺さないで! お願い……クラウンおじさん!!」
「――っ!」
 
そのとき一瞬、クラウンの左目が緑色に戻ったかのように見えた時、クラウンはアルファにかざしていた左手を抑え込むかのように右手を使って力強く抑えつけた。

「くっ……!」
 
そんなクラウンの姿にアルファは軽く目を見張ると、直ぐに私たちへと手をかざした。

「黒影の鎖(シャドウチェン)!!」
 
アルファは黒影の鎖を使ってクラウンの体を拘束した後、闇の剣を数本出現させてから飛ばすと、私の両手首と両足首に巻き付いていた黒い手たちを斬り捨てた。