ここまでしてシエルと言う者の存在を消したいと言う事は、彼女が星の涙の欠片を引き継ぐ者だと言う事に間違いありませんわね。

しかしただ殺せば良いだけだと言うのに、こんな肉を腐らせる毒を飲ませてまで殺したいだなんて、一体何が目的だと言うのかしら?

「しかし、マール。あんな方々の思い通りに動くだなんて、つまらないじゃないですか?」

『そうだね〜。あたし的にセイレーンは、素直に自分が思うまま行動してほしいんだよね』

「ふふ、だからこれからわたくしは、この自分の目で見極めてから、全ての事に決着をつけようと思います」

彼女を殺すか生かすかどうかは、その後に決めるとしましょう。

『っ! セイレーン!』
 
その時、研究施設から禍々しい魔力の波動が感じられた。

そして同時に研究施設内で爆発が起こったのか、黒い煙が空へと上がっていくのが見えた私は鞘からマールを抜く。

「この魔力の波動……前よりも一層気持ち悪くなっておりますわね」

『そうだね。この感じ……まるであの世界で眠っているはずの、黒炎の太陽に似た気配みたいだ。でも何であんな場所から?』

「……急ぎましょう。マール」
 
わたくしは研究施設に急ぐために走り出した。

✭ ✭ ✭

研究施設の側まで来た時、二度目の大きな爆発が起こり地面を大きく揺らした。

「こ、これは……っ!」
 
地面の下から禍々しい魔力を感じた時、三度目の大きな爆発が直ぐ側で起こった。

わたくしは咄嗟に水の輪(ウォーターリング)を使って自分の身を守り、爆発が起こった場所をじっと見つめた。
 
すると黒い煙の中に人影らしき物が見えた時、わたくしはマールを構えた。

『セイレーン……気をつけてね』

「ええ、分かっておりますわ」
 
水の輪を解いてからマールに魔力を注いだ時、その者は姿を現した。

「っ! あなた……」
 
わたくしたちの前に姿を現したのは、酷い怪我を負ったベータを抱えたガンマだった。

わたくしは彼らの姿を上から下まで見下ろし傷の具合を伺った。
 
ベータはもちろん酷い怪我を負って気絶しているように見えますけど、ベータよりもガンマの方がもっと酷い怪我を負っている。
 
だって彼の左腕は既に失われていて、右腕だけでベータを抱えているような状態だったのだから。

「……なんだぁ。よく見たら魚人族のセイレーンじゃねぇか」
 
ガンマはわたくしの姿に気がつくと、そのままゆっくりと地面に片膝を付けてベータを寝かせる。
わたくしは一旦マールを鞘に戻して彼らの側へと寄った。

「お前さんがここに居るってこたぁ。この場所が見つかるのも時間の問題ってところかぁ」

「……一体何があったと言うんですか? そんな酷い怪我を負って」
 
ガンマは来ている上着を破り捨てると、血がボタボタと垂れている左腕に丁寧に巻き付けていく。