ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

その光景をクラウン様は数秒間見つめた後、ガンマへと視線を移動させた。

「……ガンマ。これは一体どういう事なのかな?」
 
ガンマはヤレヤレとでも言うように大剣を担ぐと、そのまま僕たちの方へと歩いて来る。

「どういうことかだってぇ? そんなもん決まってんだろうがよぉ」
 
僕は目の前に立ったガンマを見上げた。
 
どうしてガンマがこんな事をするのか僕でも理解出来なかった。

確かにガンマにはクラウン様を裏切る話しはしていた。

でもガンマもクラウン様を裏切るだなんて……そんなこと一言も言っていなかったのに。

「ガンマ……どうしてですか? なぜ、お前まで……」

「……ふっ。そんなもん決まってんだろうがよぉ」
 
ガンマはわしゃわしゃと僕の髪をかき回すと、大剣を構えてこちらに背を向けて仁王立ちした。

「お前たちは行きやがれ。ここは俺が足止めしとくからよぉ」

「なっ?!」
 
その言葉に僕は目を見張った。

「な、何を言っているんだ! お前その意味分かってんのか?!」

「ああ! ……分かってるさぁ。だから、お前たちに乗ってやったんだからよぉ」

「……ガンマ」
 
もしかしてガンマはずっとこの機会を狙っていたのか? 

僕がクラウン様を裏切った時、じゃあ自分もって言ってセシルを逃してあげるために。

「ほら、さっさと行きやがれ。今のお前じゃ足手まといなんだよぉ」

「っ!」
 
ガンマは呆気に取られているベータへと視線を移動させる。

「つ〜ことだ、ベータよぉ。俺とアルファはここでクラウン様を裏切らせてもらう」

「なっ……! お前たち……なぜだ! なぜ、恩人であるクラウン様を裏切るような事をするんだ!」

「ふっ。なあ、ベータよぉ。お前は俺たちがクラウン様を裏切ったように思えるかもしんねぇけどよぉ、最初に俺たちの事を裏切ったのは、他の誰でもないそいつだろ」

「っ!」
 
その言葉にベータは軽く目を見張って瞳を大きく揺らしていた。

その姿を見てやっぱりベータも薄々気づいているんじゃないかと思った。
 
でもやっぱりベータにとってクラウン様は自分の命の恩人であり、自分の事を娘だと言ってくれた父親だから、簡単に裏切る事が出来ないんだ。
 
しかしベータにとってクラウン様は父親って言うよりも、きっと深く愛している人なんだと思う。

だから余計に……裏切りたくない気持ちが前に出るんだ。

「……っ」

ベータは歯を強く噛みしめると腰にある剣を鞘から抜くと、その切っ先をガンマへと向ける。

「……もし例えそうであったとしても、私にとってクラウン様が何よりも大事で、誰よりも信じる事が出来る人だ!」
 
そう言ってベータは思い切り踏み込むと、ガンマとの距離を一気に縮める。

そして剣を思い切り振り上げようとした時、その刀身をガンマは素手で掴んで止めて見せた。