「まさか……予想していた通りになるなんてな」

「ど、どういうこと……?」

「最初から全てお見通しってわけですよ。君がエアになる事を拒むことも、僕が必ず助けに入ることも、あの人には全部分かっていたんだよ」
 
アルファはかざしていた手を下ろすと、そっと私の手を握ってくる。

「クラウン様。僕はずっとあなたに恩返しがしたくて、あなたの役に立ちたくて言いなりになってきた。それは……あなたがこの世界を救済して、みんなの事を救ってくれるって、そう信じていたからだ。でも……今のあなたは昔のあなたじゃない。もう、僕の知る馬鹿でドジで優しかったクラウン様じゃない」
 
その言葉に私は、小さい頃に会った時のクラウンおじさんの事を思い出した。
 
確かにアルファの言う通りだ。

今目の前に居るクラウンは、私の知っているあのクラウンおじさんじゃない。

それにお父様も言っていた。

今のクラウンは絶対に駄目だって。

「あなたは自分の強欲にまみれた欲望を叶えるために、オフィーリアさんを殺して奪った星の涙の欠片を奪って、この世界のトトになろうとしているじゃないか」

「……えっ」
 
オフィーリアを……殺した? お兄様の大切な人を……殺した!?

✭ ✭ ✭

「そう……あなたが変わったのはおそらくあの夜だ」
 
僕はそう言って目を細めると、ぎゅっと手を握る力を込めた。

「単刀直入に聞きます。あなたは……誰なんですか?」

「っ!」
 
その言葉にベータとガンマは同時にクラウン様へと視線を送った。

「……クラウン様」
 
クラウン様はニヤリと笑みを浮かべると口を開く。

「まったく……このまま君も俺に力を貸してくれていたら、君が裏切ろうとしている事には目を瞑ってあげようと思っていたのに」

「いや、あなたはきっと僕を殺していたと思いますよ」
 
僕がそう断言すると、クラウン様は目を細めて僕たちに手をかざした。

「だったら、お望み通りにしてあげても良いけど?」
 
その言葉を聞いてクラウン様を警戒した時、ガンマが背中に背負っていた大剣を鞘から抜く姿が見えた。

「……ガンマ?」
 
するとガンマは大剣を思い切り振りかぶると、その刀身をクラウン様の頭上目掛けて振り下ろした。

「うりゃあああ!!!」

「――っ!」
 
クラウン様は咄嗟に黒い守り(セイブルシールド)を貼ると、そのまま左へと大きく飛んだ。

勢い良く振り下ろされた大剣は、そのままクラウン様が居た場所へと直撃すると砂埃を上げる。