「レーツェル。お兄様がどこに居るのか分かりますか?」

『人が多いところに行くと言っていましたので、もしかしたら広場の方に居るのかもしれません』

「広場……」
 
レーツェルの言葉に私は顔を歪めた。
 
出来れば人が多いところには行きたくなかった。

前はブラッドのマジックのおかげで、自由に街中を歩く事が出来たけど、今はそういうわけには行かない。

白昼堂々と自分の髪を晒して歩くだなんて、クラウンたちに自分の居場所を伝えているようなものだ。

「……早くお兄様と合流しましょう」

『そうですね』
 
私は覚悟を決めて足早に広場に向かって歩き始める。

すると一人の女声とすれ違った時に耳元で――

「あら、あなた面白い剣を持っておりますのね」

「っ!」
 
その言葉に私はレーツェルの柄を掴んで、咄嗟に横に飛んで構えた。

「ふふ、そんなに警戒しないでくださいませ。わたくしはあなた方の敵ではありませんわ」

「て、敵じゃない? でもあなたは」
 
私は少し警戒しながらじっと彼女の様子を伺う。

女性はくすくすと笑うと、真っ青な瞳で私を見つめてきた。
 
よく見れば女性の肌の所々に魚の鱗のような物が見られる。

髪の色はターコイズブルーのような水色で、そんな彼女の腰には剣が下げられている。

その剣に視線を送ったとき微かだけど魔力が感じられた。

「その剣……魔剣ですか?」
 
そう問いかけた時、彼女は目を丸くすると高笑いを上げた。

「まさか……直ぐに見破られるだなんて。流石でございますわね」

「そ、そんなに凄いことなのですか?」
 
私の言葉に彼女は小さく頷くと、来ているドレスの端をつまみ軽く頭を下げて名乗る。

「名乗るが遅くなってしまい申し訳ありません。わたくしは魚人族の長、【セイレーン】と申しますわ。どうぞ気軽にセイレーンとお呼び下さいませ」

「せ、セイレーン?!」
 
ど、どうして彼女がここに居るの?! 

……じゃあ彼女の腰にある魔剣は!