ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「俺たちは平気だ。それよりも今は……」
 
お母様と合流した私たちは、何とか屋敷から出ようと出口を探した。

しかしどこもかしこも火の海になっていて、屋敷の外へ出ることは殆ど不可能に近かった。

「お母様……お父様……」
 
するとお父様は私の目線に合わせてしゃがみ込むと、真剣は表情で話し始める。

「良いか、セシル。俺とフィエリアは今からお前だけでも外に逃がす」

「だ、だからそれは……!」

「良いから、聞け! セシル!」

「っ!」
 
お父様は力強く私の両肩に手を置くと、じっと私の顔を見てくる。

そんなお父様の姿から目を逸らす事が出来なかった私は、お父様の言葉を待った。

「セシル。ここを出たらお前はまず、レオンハルト君たちの家に走るんだ」

「れ、レオンハルトお兄様の家に?」

「ああ、そうだ。そうしたらお前は、ブラッドの事を追いかけろ」

「……お兄様を?」
 
でもお兄様は……。

「あ、あの……クラウンおじさんは駄目なんですか?」
 
私の言葉にお父様とお母様は何故か辛い顔を浮かべた。

そして少し間をあけてから。

「クラウンは……駄目だ」
 
お父様はキッパリと私にそう告げた。

どうして? 

だってクラウンおじさんはお父様の弟で、アルファお兄様のお父さんで……。

「良いか! 絶対にクラウンには頼るな! 今のあいつは……駄目なんだ!」
 
そう言ってお父様は直ぐ近くの窓ガラスに手をかざすと、魔法を使って破壊した。

そしてそのまま私の手首を掴んだ。

「セシル。お前が俺たちの元に生まれてきてくれてよかったよ」

「お、お父様……?!」

「セシル。あなたやブラッドがこれからどんな大人に成長していくのか、それを側で見る事はもう出来ないけど、私とクロードはいつまでもあなた達の側に居るから、それをどうか忘れないで」
 
お母様の言葉に頷いたお父様は、私の体を水の輪(ウォーターリング)で包み込むと、そのまま力強く私の体を投げ飛ばした。

「――っ!」
 
私の体が窓の外へと投げ出された瞬間、屋敷はそのまま大きな爆発を起こした。

「お父様!!! お母様!!!」
 
二人の姿が炎の中へ消えたのを見たのが最後、私はそのまま大きなショックを受けて意識を手放してしまった。
 
そのあと自分がどうなったのか記憶がない。

意識を取り戻して目を覚ました時、私は冷たい寝台に寝かされていて、全ての記憶を失っていたのだから。

「…………思い出した」
 
今まで何かによって封じ込められていた記憶を全て思い出した時、頬に涙がボロボロと流れた。

「お父様……お母様……! ……お兄様!」