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アルファに連れて来られたのは、パパが良く使っている地下実験室だった。

実験室の中にはベータとガンマも揃っていて、私はその二人の真ん中に立っているパパの側に寄った。

「パパ! 怪我はもう大丈夫なの?!」
 
パパは二ヶ月前にオフィーリアを助けに来た、ブラッドって人によって酷い怪我を負わされて帰って来た。

そのことをアルファから聞いて、私はその日パパのところに急いで飛んで行った。

そしてパパの怪我の具合を見て体が震えた。
 
ブラッドは本気でパパの事を殺そうとしたんだと思って、またその人がここに来るんじゃないかと思ったら怖かった。
 
でもパパは【ここは直ぐには見つからないよ。だからそんなに心配しなくてもいい】と言ってくれた。

だからここ二ヶ月、ブラッドはこの場所を見つけられないのかパパを殺しに来る事はなかった。
 
でももしここへやって来たとしても、今度は私がパパを守るんだ! 

ブラッドにパパを傷つけさせたりなんかしない!

「それじゃあ、シエル。早速だけど本題に入ろうか」

「うん」
 
私の後ろでアルファは周りの様子を伺っている。

そんなアルファに軽く首を傾げた時、パパ優しく私の両手を取った。

「シエル。今からお前には、お前にしか出来ないことをやってもらいたいんだ」

「私にしか出来ないこと?」
 
パパは私の言葉に軽く頷くと、私の片手を引いて複雑な魔法陣が描かれた場所の真ん中へと私を立たせる。

「シエル。お前は今からこの世界を救済するんだ」

「この世界を救済する? 私が?」
 
私がこの世界を救済するの? でもそんな重大なこと私に務まるのかな?

「パパの願いをお前も知っているだろ?」

「……うん。パパの願いはこの世界の人たちを幸せにする事なんだよね?」
 
小さい頃からパパにそう聞かされて育った事もあるから何となく覚えてる。