「遂にシエル様にも話すそうですよ。僕たちがこれから何をしようとしているのかってね」
 
アルファからそう聞かされた私は膝を抱えて宙に浮いたまま、体をぐるっと回転させて微笑した。

「はあ〜……やっとなんだね」
 
これで私もみんなの力になる事が出来るんだ。

そう思うだけで私はニヤケが止まらなかった。
 
私はずっとみんなの力になりたいと思ってた。

パパのお手伝いがしたいと思ってた。
 
でも今の私は自分で自分の魔力を上手くコントロールする事が出来ないから、パパにはまだ早いと言われていた。
 
だから超過保護なパパは私をあまり外に出したがらない。

そのせいで友達も出来ないから、私のお話し相手はいつも護衛のアルファだけだった。

それは彼が一番私の側に居てくれる事が多かったからだ。
 
でもアルファはパパの命令で私の側に居るだけ。

だからアルファは友達じゃなくて、パパと同じ私の家族なんだ。

「僕は……君が君じゃなくなるのは嫌ですよ。君が居なくなるのは、何よりも悲しいんだ」
 
さっきのアルファの言葉を思い出して、宙に浮いていた私は体勢を整えると床にそっと足裏を付ける。そしてその言葉の意味を考え始める。

「あの言葉は……どういう意味だったんだろう?」
 
私が私じゃなくなるのが嫌だって意味だよね? 

でも私は私のままだし、きっとこの先もずっと私は私のままだと思う。

「だから、シエル。もし君が嫌だと思ったら、迷わず僕の名前を呼んでほしい」
 
私が嫌だと思ったら……か。もしかしてその話しはパパの話と関係しているのかな?

「う〜ん……」
 
いくら考えてみてもアルファの言葉の意味が分からず、私は眉間にしわを寄せて考え込む。

しかし直ぐに顔を上げて、再び宙を浮き始める。

「考えても仕方がないよね。うん、きっと大丈夫だよ」
 
そんなことより今はパパのお手伝いのことを考えなくちゃ。

私はパパの何を手伝えば良いんだろう?

「シエル様」
 
すると部屋の扉が軽くノックされて、部屋にある時計に視線を送ると約束の時間がやってきていたことに気がついた。

「は〜い、今行くね」
 
扉の外で待っているアルファに声をかけ、私は指先で毛先を遊ばせて笑った。