ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「アムール様。あなたは私を見つけてくれました。その手で私を光の世界へと誘ってくれた。そのおかげで、私の心は救われたんです」
 
そう言ってレーツェルは涙を流した。

その姿に驚いた俺は目を見張ったが、直ぐに彼女から目を逸して唇を軽く噛んだ。

「いや……そんなの救った事にはならないだろ」
 
優しく握られた手を見下ろした時、服の上から透けて見える彼女の腕の傷が見えて、俺は辛く表情を歪めた。

「お前の体には……消える事のない傷跡がたくさん残っている。俺は出来る事ならその傷跡を何とかしてやりたいと思ってる。でも……俺にそんな力はない。お前を救ったのだって、俺じゃなくてエアだ」

「アムール様……」
 
もっと俺に力があったら、レーツェルもブラッドもオフィーリアも全員守る事が出来たんだ。

でも今の俺は生きていた頃と変わらず無力だ。特別な力なんて何一つ持っていない。

「どうしてエアは……俺にこんな力を授けたんだろうな? こんな力……ブラッドのような男でなければ、何の役にも立たないだろ」
 
愛した人を思えば思うほど魔力を増していくだって? 

こんな力……ただ魔力が増していくだけじゃないかよ。魔力が増したところで何の力にも。

「それはアムール様が誰よりも、人を愛する事を理解しているからではないでしょうか?」

「――っ!」
 
その言葉を聞いて俺はレーツェルへと目を戻した。

「アムール様は人を愛する事の意味を誰よりも知っています。大切な人を失って抱いてしまう感情も知っている。だからこそエアはブラッドのような、心から愛した一人の女性のために、本気の力を振るえる人の力になってほしいと、そう願ったのではないでしょうか?」

「……心から愛した……一人の女性のために……」
 
レーツェルの言う通り、俺は人を愛する事の意味や、大切な人を失って抱く感情を知っている。

大切な人を失って抱く感情はとても怖い物だ。