ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「……っ!」
 
恐る恐るオフィーリアの方へ振り返ると、彼女は碧眼の瞳を揺らして俺を辛そうに見てきていた。

そんなオフィーリアの姿に俺は胸を締め付けられた。
 
やっぱり……幻は幻でも……お前は……オフィーリアなんだな。
 
俺はオフィーリアの方へ体を向け直して彼女の手を取った。

そのとき俺たちの周りとぶわっと数多のアオイホタルたちが飛び交った。
 
まさかこのオフィーリアを作り出したのは、アオイホタルたちなのか? 

そんな考えが脳裏を過ぎった時、彼女の声が耳に届く。

「ブラッド……。そんなに自分の事を責めないでください」
 
その言葉に俺は目を見張ったと同時に、両目から涙が溢れてボロボロと頬を伝っていく。

俺はぎゅっと目を瞑って、彼女の手を握る手に力を込めた。

「俺は……お前に守られてばっかりだ。あの時お前を守るって約束したのに……結局俺は……約束を守れなかった! 強くなるために魔剣の力を手に入れても……結局俺は……お前を――」
 
【死なせてしまった】と言葉を言いかけた時、彼女は人差し指を立てると俺の唇とそっと押し当てた。

その行動に俺は目を見張る。

「ブラッドのせいじゃないですよ? あなたはいつだって全力で私を守ってくれた」
 
オフィーリアはそう言うと優しく微笑して言葉を続ける。

「ブラッド。私はあなたに出会えて幸せでした」

「……オフィーリア?」
 
彼女は俺から手を放すと、今度は両腕を広げて俺の体を抱きしめた。

「ブラッド……あなたは私にとって世界で一番大切な人で、心から愛している人です。だからあなたの隣に居る事は、何よりも幸せでした」

「……ああ、オフィーリア。俺もだよ」
 
俺は彼女の体を抱きしめ返しながら言う。
 
なあ、オフィーリア。

俺にとってもお前の隣に居る事は、自分自身の幸せでもあったんだ。

お前が笑ってくれると俺も嬉しくなって、自然と笑顔を作れるようになっていた。

いつもだったら作り笑顔ばかりを浮かべていたけど、お前の隣だと自然と笑顔になる事が出来たんだよ。
 
たかが笑顔ごとこに幸せを感じるなんて、変に思われるかもしれないが、たったそれっぽっちの事でも、俺にとっては幸せなことなんだよ。