ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

アオイホタルたちが光らせている青白い光は、まるで星の涙が放つ輝きに似て見えた俺は涙を流した。

そして右拳の上に止まっている一匹のアオイホタルを見つめた。

「綺麗だな……」
 
そう小さく呟いた時、右拳の上に止まっていた一匹のアオイホタルは飛び立つと、俺の周りを円を描くように飛び始めた。
 
そのアオイホタルに釣られて、辺りを飛び交っていたアオイホタルたちも俺の周りを飛び始める。

「……俺を慰めてくれているのか?」
 
俺はふとそんな事を思った。

しかしアオイホタルが人の感情を読める何て話しは聞いた事がない。

ただ珍しいホタルで有名だって事は知っている。

しかもその姿を見る事が出来るのはごく僅かな場所だけであって、もし一度だけでもアオイホタルを見る事が出来たら幸福になれる、なんて言い伝えがあるらしいけど、本当かどうかは分からない。

でもこれだけのアオイホタルの群れを見る事が出来たのは、今の俺にとっては幸運だったのかもしれない。

さっきまで心の殆どを負の感情で覆われていたが、今は少しだけ収まったような気がして、俺は涙を拭って立ち上がった。

そしてアルたちのところへ戻ろうと思って、アオイホタルたちに背を向けた時、背後に人の気配を感じて俺はとっさに振り返った。

「――っ!」
 
俺はその場に立っていた人物を見て目を疑った。

「…………オフィーリア……!」
 
そこには死んだはずのオフィーリアが立っていた。

オフィーリアは閉じていた目を開くと、優しい笑みを浮かべて両手を広げた。

「っ! ……オフィーリア!」
 
俺は直ぐにオフィーリアの側に駆け寄った。

彼女の体を抱きしめようとして腕を広げかけた時、オフィーリアの体が半透明である事に気づいて足を止めた。

「……そう、だよな。そんな……都合よく、お前が居るはずないもんな……」
 
そうだ……オフィーリアを死なせたのは……俺自信だろ? 

こんな幻覚を見てまで彼女の存在を求めて、俺は許しでも請いたいつもりなのかよ? 

そんなこと……許されるわけないだろ!!
 
俺は広げかけた腕を下ろし彼女に背を向けて、この場から離れようとした。

しかしそんな俺の手を、幻であるはずの彼女は取った。