「そんなこと言われなくても分かっている。聞き込みはお前より手慣れているからな。それに……俺はお前の方が心配だ」

「………は?」
 
俺の方が心配ってどういう意味だよ?

「女の子に聞き込みする時に、口説くのだけはやめてくれよ。ホテルに帰って部屋に戻ったら、知らない女性が居たんじゃ俺だって困る」
 
レオンハルトはそう言いながら腕を組んで頷いている。

その姿に後から怒りが込み上げてきて、俺は怒りで体を震わせた。

「はあ!?! そんなことしねぇし! 今日は仕事で来てるんだ! ちゃんと仕事とプライベートは分けるっつの!」
 
こいつ……俺のことを何だと思っているんだ! 

何でもかんでも女神たちに声を掛けているとでも思っているのかよ?! 
 
そりゃ街に行く度に女神たちに声を掛けているから、そう思われても仕方ないと思うけど、流石に仕事とプライベートはちゃんと別けるようにしているんだ。
 
事件に女神たちを巻き込んでたまるか。

「それに……」
 
ここ最近、俺は自分から女神たちに声を掛けていなかった。

街に行って俺の姿を見つけて近寄って来た女神たちに、【この後どうですか?】って誘われても、頭を縦に振る気にはなれなかった。

それは女神たちと話をしている間も、脳裏に夢の中の彼女が浮かんだからだ。

そのせいで声を掛ける事をやめてしまったり、女神たちに付き合ってあげる気にもなれなかった。

「ブラッド?」

「……何でもない。とりあえず二手に分かれてそれぞれ聞き込みをした二時間後に、またここに集まって報告し合おう」

「分かった」
 
頷いたレオンハルトは、賑わっている広場に向かって歩き始めた。

その背中を見送った俺は港のある街の方へと歩き始める。