ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

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「愛している――」
 
なぜ、彼女と最後に別れる時にそんな言葉を口走ったのか……。

それはもう二度と会えないと分かっていたからか? 

それともこんな僕を好きになってくれたエアに、ちゃんとした返事をしたかったからか?

「いや……違うな」
 
僕は魔剣エターナルを地面に突き刺しながら、ゆっくりと目を開ける。

もうこの目には何も映らない。ただ真っ暗な世界が広がっているだけ。
 
ゆっくりと世界が灰色一色に染まっていく中で、僕は最後にエアの笑顔を思い出す。

そして――

「トト……私、あなたの事が好き」
 
その言葉を思い出した俺は、軽く歯を噛み締めて柄を握る手に力を込めた。

「ああ……分かってたよ。お前が……僕の事を好きだって……。だから僕は……」
 
お前に好きだと言わなかったんだ。

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「――っ!」
 
俺は閉じていた目をカッと見開いて、勢い良く体を起き上がらせた。

「はあ……はあ……」
 
乱れている息を整えながら額に手を当てる。

「……今の……夢、なのか? それとも……」
 
俺は深く深呼吸してから辺りに目を配った。

「……そうだ。確か俺は……」

あの事件から二ヶ月――
 
サファイアを仲間にした俺たちは、クラウンの行方を追っていた。

しかし奴等の足取りは二ヶ月経った今でも掴めていない。

この右目すら何の反応も示す事はなかった。
 
その事にイライラが募ってきていて、このままではみんなに八つ当たりしてしまうと思った俺は、【一人になりたい】と言って三人から離れていた。
 
今は休憩中で近くの川辺でそれぞれ休んでいる頃だろうけど、俺は中々戻る気にはなれなかった。

「……オフィーリアを死なせてから……もう二ヶ月か」
 
時の流れは本当に早い物だな。

気づけば自分の誕生日なんてとっくに過ぎていて、俺は数週間前に二十一歳になっていた。

「オフィーリア……」
 
彼女の名前を呟いた時、あの時の光景がフラッシュバックして自分の腸が煮えくり返った。

右拳に力を込めて地面に強く打ち付けたとき歯を噛み締めた。