「あいつは前に言っていた。俺はエアとは違って何の力もないただの人間だって。俺からしたらそんな事ないと思うけど、あいつはそう思えないらしい」
 
アルはそう言ってエアとトトの方へ視線を送る。

「エアは世界を救済するための力を一人だけ授かって生まれた、じゃあ僕の存在はどんな意味がある? エアだけが世界を救済するための力を与えられているなら、僕の存在はいらないだろう? って、ずっと前に散々愚痴られたよ」

「……じゃあトトは、エアが嫌いなの?」

「いや、そんなことは絶対あり得ないだろ」
 
アルは僕に苦笑すると言う。

「あいつはエアの事が誰よりも好きだろ?」

「…………どういう意味?」
 
あの時のアムールの言葉を僕は理解出来なかった。

トトはエアの事が好きじゃないのに、誰よりもエアの事が好きって、矛盾しているじゃないかとすら思った。
 
僕は閉じていた左目を開き、目の前に浮かぶ星の涙の欠片を見上げた。

そっと腕を上げて手を伸ばした時、星の涙は僕……私の存在に気がついたのか、青白い光を点滅させた。
 
その様子を見て僕は笑みを浮かべる。

「もう……そろそろだから、我慢……して下さい。あと少しで……あなたも自由に……なれる」
 
正直、アルとレーツェルには悪いと思っている。
 
でもこれは僕がやらなければならない事なんだ。

二人を巻き込むべきじゃない。

クラウンが星の涙を破壊してくれたおかげで、ようやく切り離す事が出来たんだ。
 
後はあの入れ物にこの欠片を移植すれば、ようやく復活させてあげる事が出来る。

「待っててね……エア――」
 
もう少しであなたに会える。やっとトトに会わせてあげられる。

「あなたの……知っている……彼じゃないけど。エアなら……それでも喜んで……くれるよね?」

あなたが愛した彼自身ではないけど、彼ならきっとエアを愛してくれる。
 
あんなオフィーリアとか言う紛い物ではなく、エアならブラッドの苦しみを優しく包み込んであげられる。

この世界のエアを愛した彼なら、トトとしてあなたの事を愛してくれる。

「だって……あなたがそうだったから」
 
エアは僕を救ってくれた、エアは私を救ってくれた。

だからブラッドの事も救ってくれる。

クラウンだって救ってくれる。

みんなの事を救ってくれる。

「この世界を……救済してくれる」
 
そうすれば……みんなが笑顔になれる。
 
エアとトトが望んだ本当の世界が……現実になるんだ。