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「死こそが……誰もが幸せになれる手段……か」
 
ボソッとそう呟き、ブラッドさんの側で幸せそうに笑っていたオフィーリアの笑顔を思い出す。

するとそこで彼女の言った言葉が蘇った。

「あなたはいったい何を見ていたのですか! オフィーリアが幸せになれるのはたった一つだけ。それは、彼の隣に居ることです! クラウンの側に居たら、彼女は不幸になって壊れてしまいます!」
 
確かにレーツェルの言う通りそうだったのかもしれない。

遠くから見ていたとは言え、あの時のオフィーリアは本当に心から幸せそうだった。
 
でもあの男が本当にオフィーリアを幸せに出来たと言うのか? 

オフィーリアの苦しみを一緒に背負っていける程の器を持ち合わせていたと言うのか? 

俺には……そんな風には見えなかった。
 
本来、星の涙が誰かをこの世界に選ばない限り、この世界にトトが誕生する事はない。

彼の魔力と力を手に入れる事は出来ない。
 
しかしクラウンから話を聞く限り、あの人は生まれながらにトトに似た魔力を持っていたそうじゃないか。

いや、トトその物の魔力を持って生まれてきた。

そしてそんな彼の側には七大精霊たちが付いている。

その事にブラッドさんは未だに気がついていないようだけど。
 
でもなぜブラッドさんはトトの魔力を持って生まれてきたんだ? 

トトはあの世界でずっと眠りについている。

死んでいないから彼の魂が転生する事はない。

それだと言うのに……どうして?

「……まあ、もう何だって良いか」
 
そう言って俺は寝返りをうった。

俺のやるべき事は全て終わった。

後は全てを見届けて、俺自身もみんなのところに行くだけだ。
 
そうだな……もし後やるべき事が残っているとするなら、それは彼を救済してやることだ。
 
ブラッドさんだってオフィーリアと星の涙のせいで、これからの人生を全て棒に振ろうとしている。
 
オフィーリアはもうこの世に居ない。

星の涙だってもうクラウンの手の中にある。

なのになぜ彼は諦めないんだ? 

どうしてそこまでオフィーリアのために頑張ろうとする?

「……」
 
こんなこと考えたところで応えなんて出ないだろう。

そもそも彼と俺が考えている事なんて何一つ合っていない。

きっと話をしたところで禄な会話になんてならないだろう。
 
だからお前も直ぐにオフィーリアのところに行かせてやる。

そうすればあなたも幸せを手に入れる事が出来る。
 
永遠の幸せと言う物を――