俺は怒りで体を震わせながらそう叫んだ。

そしてギロリとクラウンの顔を睨みあげる。

「母さんは言った! オフィーリアは絶対に幸せになれるって! 俺は母さんの言葉を信じている!」
 
そうだ! 

母さんは言っていたんだ! 

オフィーリアは絶対に幸せになれるって!

母さんが俺に嘘を吐くはずがないんだ!

「じゃあ聞くけど、その幸せとは一体いつ訪れるんだ?」

「そ、それは……」
 
俺は言葉を詰まらせて視線を逸した。

そんな俺の姿を見たクラウンはニヤリと笑うと、俺の耳元にそっと耳打ちする。

「君が心から妹の幸せを願っているのなら、俺が彼女を幸せにしてやろう」

「……えっ」
 
その言葉を聞いて俺は恐る恐るクラウンの顔を見上げた。

「君が望んでいる事は、あの子が星の涙に関するありとあらゆる事から開放されることだ。だがそれは彼女が行きている限り不可能に近い」

「じゃあ……じゃあどうすれば、オフィーリアは開放されるんだ! どうすれば幸せにしてあげる事が出来るんだ!」
 
どうして……オフィーリアがそんな目に合わなければならないんだ! 

あいつはまだ八歳で誰かが側に居てあげないと、この逃れられない運命に押し潰される事になる!

一体……どうすれば。

目尻に涙を浮かべてギュッと目を閉じた時、クラウンがひっそりと告げる。

「死だよ」

「……死?」
 
【死】と言う言葉が俺の中で呪文のように巡った時、その拍子に俺の瞳から光がスッと消えた。

「そうだよ。【死】こそがありとあらゆる全ての物から開放される手段。そして彼女を唯一してあげられる手段なんだよ」

「死…こそが、オフィーリアの……幸せ」
 
そっか……じゃあ母さんも死んだ事によって、ようやく星の涙から開放されて幸せになれたんだ。

もうあんな辛い日々を送らなくて済むんだ。
 
じゃあオフィーリアも死ぬ事が出来れば、星の涙から開放されて幸せになれる……!

「母さんが言っていた【絶対に幸せになれる】って言葉の意味は、こういう意味だったんだね」
 
そう小さく呟いた俺はニヤリと微笑して顔を伏せた。
 
なんだ……簡単な事じゃないか……。

「ふっ……ふは……ははは」
 
死んでしまえば、どんな人だってあらゆる事から開放されるんだ! 

罪を犯した罪人だって、後悔している人だって、悲しんでいる人だって、この世に生きる全ての人々は、死ぬ事によってようやく本当の幸せを手に入れる事が出来るんだ!
 
だから……オフィーリアも死ねば……幸せに……なれるんだ!