✩ ✩ ✩

「俺だったらあの子を救いだしてあげられる」

「っ!?」
 
オフィーリアを逃がすために残ったエアの末裔たちは、俺を除いてあの三人によって呆気なく殺された。
 
俺もここで殺される事を覚悟していた。

オフィーリアにはレーツェルを託す事が出来たし、後は残りの魔剣たちを集める事が出来れば、守護者たちがオフィーリアの事を守ってくれる。
 
だから俺はこの場に残って、最後の瞬間まで少しでも長く時間稼ぎが出来れば良いと思っていた。
 
しかし俺はクラウンの【あの子を救い出せる】と言う言葉に反応してしまった。

「君は他の人達にはバレないように、上手く自分の気持ちを押し殺していたようだけど、残念だったね」
 
その言葉に俺の体に鳥肌が立った。
 
こいつが俺の何を知っているって言うんだ? だって俺は何も言っていない。

こいつとだって今日が会ったのが初めてだ。

それだと言うのに、なぜこの男はこんな俺の気持を知っているかのように喋る?

「君は……本当は星の涙の事なんて、どうでも良いと思っているんだろう?」

「――っ!」
 
心臓が大きく跳ね上がった。

俺の心の奥底でずっと表に出て来ないようにしていた、とある感情が脈を打ち始める。
 
そんな俺の腕を掴んだクラウンは、ぐっと自分の顔を近づけると言葉を続けた。

「本当は自分の妹が星の涙の器になるなんて事を、望んでいないんだろう? 星の涙なんてこの世になければ良いと思っているんだろう?」

「ち、ちがっ! 俺はそんなこと……」
 
不気味に輝く右目に見つめられた時、心を読まれている気がして怖かった。

ドクンドクンと心臓の心拍数も上がっていき、嫌な汗が頬を伝った。
 
この男の言う通り……俺は星の涙なんて心底どうでも良かった。

俺はただ家族三人で幸せに暮らせればそれで良かったんだ。
 
でも……それを星の涙は俺から奪い去っていった。

母さんを殺したのはこの男じゃない。

あれは母さんだけじゃなく、俺にとって大切な妹のオフィーリアも殺そうとしている。