俺は用意された部屋のベッドに横になりながら天井を見上げていた。

碧眼の瞳を細めて天井を軽く睨み上げながら、クラウンから告げられた事が脳裏を過ぎった。

「オフィーリアなら死んだよ」
 
そう淡々とクラウンから告げられた俺は、特に何の感情も抱く事はなかった。

ただ我ながらに酷い兄だなと思い笑っただけだ。
 
しかし何故かその事を聞いた日から、俺は小さい頃の夢をよく見るようになった。

母さんの腕に抱かれながら、まだ生まれたばかりのオフィーリアに恐る恐る手を伸ばす自分の姿。父さんが死んで、これからは俺が家族を守っていくと誓った時の自分の姿。

日に日に体が弱くなっていく母さんの姿を見る事しか出来ず、悔しくて辛くて何も出来なかった自分の姿。

そしてたった一人の大切な妹を守るために、オフィーリアにレーツェルを託してクラウンに向かっていった自分の姿。
 
その記憶はまるでこうなる前の自分を振り返っているようにも思えて、ひょっとして自分は今更ながらに後悔でもしているのかと思った。

でも今更後悔したところで遅い。だってオフィーリアは死んでしまったのだから。

「オフィーリア……お前はこれで、本当の意味で幸せになれたんだ。ようやく、母さんのところへ行かせてあげる事が出来た」
 
あいつに全ての重荷を背負わせてしまったのは、他の誰でもない俺たちエアの末裔だ。

そのせいでお前はどれほど傷ついた事だろう。
 
ずっと一人で長い旅をし続けて、誰に頼る事も出来ずに、何度涙を流させてしまっただろう。
 
だから俺はそんなオフィーリアを開放させてあげたかった。

星の涙から、エアの末裔から、魔剣を全て集めると言う任から、全ての事から開放して幸せになって欲しかった。
 
それは母さんの最後の願いだったからだ。だから俺はあの時クラウンの手を取ったのだから。