するとクラウン様のある一言によって、アルバはその場で膝から崩れ落ちた。

「ベータ。この子の手当を頼んでも良いかな?」

「えっ……しかし、クラウン様。その子は……」

「クラウン様。そいつぁ見逃すって言うんですかぃ?」
 
ガンマの言葉にクラウン様は小さく頷いて見せる。その姿に私たち三人は顔を見合わせた。

「この子は僕が引き取るよ。そして話を聞かせてもらうんだ。彼が知っている限りの全てをね」
 
とりあえず私はアルバの体に治癒魔法を施したが、なぜクラウン様はこんな子供にエアの末裔やこの世界について聞こうと思ったのだろうか?
 
こんな幼い子供がいったい何を知っていると言うんだ? と、当初そう思っていた私だったが、アルバは幼い子どもながらにも色んな事を知っていた。
 
エアの末裔と呼ばれた者たちの本当の正体、膨大な魔力を秘めてありとあらゆる願いを何でも叶えてくれると言われる星の涙のこと、この世界が一体どうやって出来上がったのか、どうしてエアとトトは私たちに魔法と雫と言う物を与えたのか、そしてそんなエアを守護していたと言われる守護者たちと魔剣の存在のこと、この事全てをアルバは知っており把握していた。
 

クラウン様もアルバの知識は期待していた以上だったようで、彼の話にはよく聞き入っていた。
 

どうしてまだ幼い子供がこんな話を知っているのか、少し疑問に思った部分はあったが、これでクラウン様が求め続けた応えは全て揃った。
 
後は星の涙を手に入れる事が出来れば、クラウン様の願いを叶えてあげる事が出来る。

クラウン様がこの世界のトトになられれば、誰も不幸ではなくなる。

全員が幸せになれる世界がようやくやって来るんだ。
 
その世界を手に入れる事が出来るなら、オフィーリア様の死は無駄ではなかった。

「後は……あいつを殺すだけだ」
 
あの男――ブラッドは必ずここへやって来る。

オフィーリア様の敵を討つために、そしてクラウン様を殺すために。
 
私は何があってもブラッドを止めてみせる。
 
例えこの命を犠牲にしても、クラウン様が望む世界が実現するなら、私はその世界を見られなくても良い。

クラウン様の為に何かが出来るのなら私はそれで構わない。