アルファやガンマも星の涙の存在を探しながら、順番にエアの末裔たちを殺していき、私たちはまだ幼かったオフィーリア様と出会った。
 
オフィーリア様は目尻に涙を浮かべガクガクと体を震わせて、恐怖の目で私たちを見上げていた。

その目を見た瞬間、私は昔の記憶が自分の中で蘇った。
 
父に暴力を振るわれ続けたあの辛かった日々、真っ赤な海に包まれた奴隷区の光景――
 
しかし私はクラウン様を裏切るわけにはいかなかった。
 
例え今の自分があの時の父親よりも、奴隷区で魔法警察たちが私たちの存在をなかった事にしようとした時よりも、自分が人生の中で最も残酷な事をしていると分かっていても、私はクラウン様のためにこの身を捧げると誓った。
 
この選択でクラウン様の願いが叶うならば、この世界で生きる全ての人々が救済されるならば、私はどんな罪だって背負っていける。
 
どんな結末だって受け入れる事が出来るんだ。

✩ ✩ ✩

しかしオフィーリア様を捉える事が出来なかった私たちは、オフィーリア様の実兄であるアルバと、最後まで生き残っていたエアの末裔たちと戦った。
 
剣を使って斬り捨てる事に私の体には血が飛び散り、冷たい目で地面に転がっている死体たちを見下ろした。

そして自分たちに向けられる憎悪に気がついた時、私は憎悪のこもった碧眼の瞳をこちらを鋭く睨みつけているアルバへと視線を動かした。

「お前が最後だ。楽に死なせてあげるから、そこから動かないで下さい」
 
アルバに切っ先を向けてゆっくりと距離を縮めていこうとした時、私の目の前にクラウン様が立った。

「クラウン様?」
 
クラウン様は私に下がるように手で制し、それを見て頷いた私は鞘に剣を戻してアルファたちの元へと戻った。
 
なぜ、クラウン様は私にアルバを殺す事をやめさせたのだろう? 

後はこの男の子を殺せば、彼女を除くエアの末裔は全員死んだ事になると言うのに。
 
クラウン様はアルバとの距離を一気に縮めると、私たちには聞こえないような声で互いに何か言葉を交わしているようだった。