ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

それからガンマもアルファが研究ノートを読んでいる時は、絶対に邪魔をしないようにしているし、私も急用がない時はそっとしてあげている。
 
私は再度窓の外を見つめ、クラウン様の姿がないかどうか探してみる。

「クラウン様……」
 
しかし案の定、雨の中にクラウン様の姿は見当たらなかった。
 
その日の夜。私はクラウン様が帰って来るまで起きているつもりだった。

しかし長旅の疲れもあってか、私はいつの間にか眠ってしまっていた。
 
でも部屋の扉がゆっくりと開かれた音に気づいて、私は眠い目をこすりながら体を起き上がらせた。

「……っ。クラウン様……?」
 
私はゆっくりと扉のある方へと振り返った。

そしてそこには全身ずぶ濡れ状態で立っているクラウン様の姿があった。

「クラウン様! ずぶ濡れじゃないですか!」
 
そんな姿を見た私は慌てて用意しておいたタオルを掴んで、クラウン様の側へと駆け寄った。

「……ベータ」

クラウン様に小さな声で名前を呼ばれて顔を見上げた時、私は驚いて思わず後退った。

「……くら、うん……様?」
 
雨上がりの雲の間から月の光が部屋の中に差し込んだ時、クラウン様の漆黒の髪が照らされた。
 
緑色だったはずの両目は灰色へと変色していて、その瞳の中には驚いた姿の私が捉えられていた。
 
確かに私の目の前に居るクラウンは、私の知っているクラウン様のはずだった。

しかし本当に今この場に居るクラウン様は、私の知っているクラウン様なの? 

ふとそう思ってしまった時、私は手の中からタオルを落としてしまった。
 
そんな私の姿に何がおかしいのか、クラウン様はニヤリと笑うと口を開いた。

「どうしたんだ、ベータ? 俺の顔に何か付いているのかな?」

「えっ……俺……?」
 
クラウン様の一人称が変わっている? 

確か……俺だなって言っている姿は今まで見たことがない。

ずっと僕って……。

「も〜……何だよ? さっきからうるさいんですけど?」

「あ、アルファ……」
 
すると私たちの声で起きてしまったアルファとガンマは、とても眠たそうにこちらへと視線を向けてきた。

そしてやっぱり二人もクラウン様の姿を見て目を見張った。

「……クラウン様?!」

「おいおい……その姿どうしたんだぁ?」

「ん? ……ああ、これのことか」
 
クラウン様は羽織っていたフードを取ると、それを床へと投げ捨てる。

そして指先で自分の前髪をクルクルしながら応える。

「ちょっとね、イメチェンってやつだよ」

「…………イメチェン?!」
 
その言葉に私たち三人は同時に声を上げた。