ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

✭ ✭ ✭

「たっくよぉ、クラウン様はどこに行ったんだぁ?」
 
エアの末裔たちの情報を集めるために、とある村に立ち寄った時だった。

急に空の雲行きが怪しくなって来たと思ったら、いきなり激しいどしゃぶり雨に襲われた。
 
そのせいでまだ昼間だと言うのに、私たちは慌てて宿を取る事にした。

今日はこの村から東の方へ向かおうと思っていたのだが、こんな雨じゃ今日は東の方へ向かうのは無理そうだ。
 
そんな中で宿を取って一息ついていたところ、クラウン様から【ちょっと外に出てくる】と言われた私たちは、クラウン様の帰りを部屋で待っていた。
 
しかしもう夜だと言うのに、クラウン様は宿に帰って来ていない。

部屋の中から窓の外を伺っても、外は雨が降っているせいもあってか、この時間帯になると人の姿はあまり見られなかった。

「雨がさっきよりも酷くなってきてる……。クラウン様は大丈夫だろうか?」

「あの人ならこのくらいの雨大丈夫でしょ? 今頃近くのお店で雨宿りとかしていると思うし」
 
そう言ってアルファはさっきから、クラウン様の研究ノートに目を通していた。

ここ最近、アルファは良くクラウン様の研究ノートに目を通していた。
 
私の記憶が正しければ、それは前にアルファが言っていた、クラウン様の兄夫妻に会ってからだったと思う。
 
クラウン様の研究を手伝っていたとは言え、アルファはあまりクラウン様の研究には興味がないのだと思っていた。

しかし最近は良くクラウン様の研究を自分から進んで手伝って居るし、時間が空いた時はこうして過去の研究ノートに目を通したり、難しい魔法書を読んでいる日が多くなった。

「なあ、アルファよぉ。お前最近ずっとクラウン様の研究ノートに目ぇ通してんな。何か気になる事でもあんのか?」

「別に……ただ、読んでいるだけだよ」
 
そう言ってアルファはガンマから目を逸らすと、研究ノートを読むのに集中し始めてしまった。

こうなってしまったら、アルファは何度呼びかけても絶対に返事をする事はない。

自分の中で区切りの良いところまで読み終えないと、手から研究ノートは離れない。
 
前に無理矢理ガンマがアルファから研究ノートを取り上げた時、今までにないくらいアルファが物凄く怒って、家の中で激しい大喧嘩が繰り広げられた。
 
止めるのが面倒くさかった私は、一人で素早く部屋に戻ってそのまま寝てしまったから、一体どうやって喧嘩が収まったのかは知らない。

朝起きて二人が居るところへ行ったら喧嘩はいつの間にか終わっていたし、二人は喧嘩で疲れたのか床に転がって眠っていた。