「いやいやいや! ホテルって言っても、こんな立派なホテルを予約したのかよ!?」
 
うん、確かにレオンハルトにホテルの予約を任せたのは俺だ。

それはレオンハルトなら人目のつかないホテルを探してくれると思っていたからだ。

道化師の行方を追って行くなら、どうしたって目立った行動は多くなるからな。

だからなるべく、道化師や他の人たちの目につきにくいホテルで寝泊まりしようと思っていのに。

こいつは……! 

だれもこんな高級ホテルを予約しろなんて言った覚えはないんだけど?! 

え、捜査の基本って人目のつかない場所を確保する事とあんぱんだよな?! 

レオンハルトは今現役の警察官だよな?!

しかも魔道捜査一課のレオンハルトだよな?! 

数々の難事件を解決してきて、数多くの犯人を逮捕して来た人だよな?! 

なにこいつ、観光する気満々じゃねぇか!

「おい! ホテルなんて他にももっとあっただろ!? なのにどうしてこのホテルなんだよ! 建物を見る限りこの街じゃ一番有名なホテルのように見えるが!?」

「いや、どうせスイレンに来るなら立派なホテルの方が良いと思ってな」
 
その言葉に顳かみが上がったのは言うまでもない。

「俺たちの目的は道化師のアジトについての情報集めだろ! なのにこんな観光する気満々でさ、もしあいつらにバレたらどうするんだよ!!」
 
こいつは危機感と言うものを知らないのか?! 

こんな目立つホテルに出入りしてたら、奴らにバレるのだって時間の問題だって言うのに!

「そのためにお前のマジックが役に立つんだろ?」

「……はあ!?」
 
まさか……変装のことを言っているのか? 

え……じゃあ何か、俺の変装技術があるから大丈夫だろうと思って、こんなホテルを選んだって言うのかよ?!