僕はベータやクラウン様たちに話が聞かれないところで、こっそりとガンマに打ち明けていた。

僕がこれからどうするのかを。
 
ガンマは僕と同じく、今のクラウン様の事を心良くは思っていなかったら、きっとこの話をしてもクラウン様には報告しないだろうと読んでいた。

「僕は……クラウン様の事を裏切るよ」

「……」
 
その言葉を聞いて、大剣の刀身の手入れをしていたガンマが手を止めた。

「お前……それ本気で言ってのかよぉ?」

「うん、本気だよ。僕はもうこれ以上、あの人のやり方には着いて行けない。それにあの人はブラッドさんを、甘く見すぎていると思うんだ」

「……ってぇ言うと?」

「あの人……ブラッドさんは必ずここへ来ると思うよ」
 
これは百%革新を持てた事じゃない。

でもあの人は絶対に諦めないで、あの時オフィーリアさんを助けに来た。
 

あんなに小さかった男の子が、心から愛した女性のために、命を張ってまで助け出そうとして僕たちの前に立ちはだかった。

だから記憶を忘却されたからと言っても、オフィーリアさんを愛する気持ちまでもが忘却されたわけじゃない。

だからきっと、ブラッドさんは必ずここへやって来ると思ったんだ。

「僕の知っているあの人は、酷く諦めの悪い人だ。どんな手を使ってでも、無理矢理にでも記憶を思い出して、クラウン様の手からオフィーリアさんを奪い返す」

「へ〜……そいつぁおもしれぇな。あの人が酷く動揺しているとこなんぞ、これまでに見たことなかったからなぁ。それを見られると思うと、今からわくわくすんな」
 
ガンマはそう言いながら鞘に大剣をしまうと、それを近くの大木に立て掛けて立ち上がった。

そしてそのまま僕の事を見下ろした。