ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

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彼女のあの言葉は嬉しかった。

こんな僕の事を好きになってくれた彼女を、僕も好きになりたいと思った。

もし僕にも誰かを幸せにする事が出来るのなら、彼女を幸せにしてあげたいと思った。

でもその願いは……叶わなかったんだ。

「クラウン様! なぜあんな事をしたんですか!! 一体どうして……!」
 
僕の質問にクラウン様はただ笑った。ただ笑いながらこう言った。

「別に……理由は特にないよ。ただもう良いやって思ったから、殺しただけだけど?」

「――っ!」

クラウン様が自分の手で唯一血の繋がりがあった、クロードさんを殺したことを、そしてフィエリアさんも……セシルさんも殺した事を、僕は全部後で知った。

あんなに優しかった人たちを、僕を実の家族のように接してくれたあの人たちを、なぜクラウン様は殺してしまったんだ。

それも全て……クラウン様の願いを叶えるためには、不必要な物だったからですか? 

自分にとって大切な子だと言っていた、ブラッドさんとセシルさんも……。

「でも俺としてはあの実験は成功したと思っているんだ」

「……実験?」

「俺はね、彼の息子であるブラッド君に、ある実験を行ったんだ」
 
ブラッド君さんを……実験に使った? 

まだあんな小さな子どもに人体実験を行ったって言うのか?!

「俺の予想通り、彼はあの右目を自分の物にした。これでもう魔力が暴走する事はないだろうし、ブラッド君はきっと家族の仇を討つために、今以上に強くなる事を望むだろうね」
 
そう言ったクラウン様は、どこかとても嬉しそうだった。

それはまるで、自分の事を殺しに来る日が待ち遠しそうにも見えた。
 
そんなクラウン様を見た僕はゾッとした。

なぜあんなに優しかったクラウン様が、こんな事をするようになったのか、一体何があってこの人をここまで変えてしまったのか。

「ああ、そうだ。アルファ。君に一つ頼みたい事があるんだ」

「……頼みたいこと、ですか?」

「うん、そうだよ。君には彼女の護衛についてもらいたいんだ」