「クラウン様。今の子が」
「……うん。兄さんの息子のブラッド君だよ」
クラウン様は僕から離れると椅子に座り直した。
「ブラッド君はね、生まれつき体が弱かったんだ。生まれながらにして高い魔力を持っていてね、今のブラッド君の雫ではそれを収める事が出来ないんだ。だから体の中で魔力が暴走していて、常にあんな状態になってしまっているんだ」
「……」
だからあの写真では、彼はベッドの中で赤い顔をしていたのか。
じゃあクラウン様が雫の研究をしているのって、もしかしてブラッドさんのため?
「お兄様……」
するとセシルは今にも泣きそうな顔を浮かべて、僕の服の裾を掴んできた。
「セシルさん……」
もしかして怖いのだろうか?
自分のお兄ちゃんがいつもあんな感じで、いつ死ぬかも分からないから。
僕はそんな彼女を何とか安心させたくて、彼女の体を抱き上げた。
「あ、アルファ?」
「きっと大丈夫ですよ」
抱き上げた彼女の体を自分の太腿の上に座らせ、そっと優しく彼女の髪を撫でてあげた。
どうしたらこの子が安心出来るのかは分からない。
でも僕は不安になったり、怖くなったりした時は、クラウン様がいつもこうして優しく頭を撫でてくれて、【大丈夫だよ】と言ってくれた。
そのおかげで僕はいつも安心出来ていた。
だから彼女にも同じ事をしたら、きっと安心してくれるかもしれないと思ったんだ。
髪を撫でられるのが少しくすぐったかったのか、彼女は頬を赤くすると優しい笑顔を俺に向けてくれた。
その時また胸の辺りが温かくなって、僕の頬もほんの少しだけ熱を帯びた気がした。
✩ ✩ ✩
「それじゃあ、またね。セシルちゃん」
屋敷を出る頃にはもう日は沈み始めていて、空には綺麗な夕焼け空が広がっていた。
そんな夕焼け空を見上げていた時、セシルさんが僕の側に駆け寄ってきた。
「あ、あの!」
「セシルさん? どうしたのかな?」
僕は彼女の目線に合わせてしゃがみ込んだ。
すると彼女は自分の顔を僕に近づけるとそっと耳打ちをした。
「あのね、私……大きくなったらね――」
彼女の言葉を聞いた時、僕の胸が小さく高鳴った気がした。
「あれ? どうしたんですか、アルファ? 顔が真っ赤ですけど」
「へっ……そ、そんなわけないですよ! 顔が赤いのはきっと、夕焼けのせいですよ」
そう言って僕は熱くなっている頬を指先で触れたのだった。
「……うん。兄さんの息子のブラッド君だよ」
クラウン様は僕から離れると椅子に座り直した。
「ブラッド君はね、生まれつき体が弱かったんだ。生まれながらにして高い魔力を持っていてね、今のブラッド君の雫ではそれを収める事が出来ないんだ。だから体の中で魔力が暴走していて、常にあんな状態になってしまっているんだ」
「……」
だからあの写真では、彼はベッドの中で赤い顔をしていたのか。
じゃあクラウン様が雫の研究をしているのって、もしかしてブラッドさんのため?
「お兄様……」
するとセシルは今にも泣きそうな顔を浮かべて、僕の服の裾を掴んできた。
「セシルさん……」
もしかして怖いのだろうか?
自分のお兄ちゃんがいつもあんな感じで、いつ死ぬかも分からないから。
僕はそんな彼女を何とか安心させたくて、彼女の体を抱き上げた。
「あ、アルファ?」
「きっと大丈夫ですよ」
抱き上げた彼女の体を自分の太腿の上に座らせ、そっと優しく彼女の髪を撫でてあげた。
どうしたらこの子が安心出来るのかは分からない。
でも僕は不安になったり、怖くなったりした時は、クラウン様がいつもこうして優しく頭を撫でてくれて、【大丈夫だよ】と言ってくれた。
そのおかげで僕はいつも安心出来ていた。
だから彼女にも同じ事をしたら、きっと安心してくれるかもしれないと思ったんだ。
髪を撫でられるのが少しくすぐったかったのか、彼女は頬を赤くすると優しい笑顔を俺に向けてくれた。
その時また胸の辺りが温かくなって、僕の頬もほんの少しだけ熱を帯びた気がした。
✩ ✩ ✩
「それじゃあ、またね。セシルちゃん」
屋敷を出る頃にはもう日は沈み始めていて、空には綺麗な夕焼け空が広がっていた。
そんな夕焼け空を見上げていた時、セシルさんが僕の側に駆け寄ってきた。
「あ、あの!」
「セシルさん? どうしたのかな?」
僕は彼女の目線に合わせてしゃがみ込んだ。
すると彼女は自分の顔を僕に近づけるとそっと耳打ちをした。
「あのね、私……大きくなったらね――」
彼女の言葉を聞いた時、僕の胸が小さく高鳴った気がした。
「あれ? どうしたんですか、アルファ? 顔が真っ赤ですけど」
「へっ……そ、そんなわけないですよ! 顔が赤いのはきっと、夕焼けのせいですよ」
そう言って僕は熱くなっている頬を指先で触れたのだった。



