ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「だが、フィエリア。大事な娘の将来のお婿さんを、今見極めることは大事だろ?」

「兄さんの言う通りだと思う。僕にとってセシルちゃんは大事な姪だし、そこら辺のガラの悪い男たちに任せるよりも、僕は絶対アルファが良いと思うんだ」
 
二人の言葉に僕は目を瞬かせた。
 
気のせいだろうか? 

さっきから二人が言っている言葉の意味が、まるで自分の将来のお嫁さんにセシルはどうだろうか? って聞かれている気がしてならないのだが……。
 
僕は隣に居るセシルの様子を横目で伺った。

すると彼女はさっきよりも顔を真っ赤にして、とても恥ずかしそうにモジモジしていた。
 
その姿を見た時、可愛いと思ってしまったのはさておき、なぜ彼女はこんなにも顔を真っ赤にしているのだろうか? 

それとさっきクロードさんが言っていた【お婿さんを見極める】と言う、言葉の意味を考えると……。

「もしかして……セシルさんは、僕の事が好きなんですか?」
 
僕の言葉に目の前に居る二人は、何故かポカンとした顔を浮かべた。
 
え、まさか違ったのか? 

そう思った僕は焦って何かを言おうとした時だった。

「とう、さん?」
 
部屋の扉の方で男の子の声が聞こえた。
 
すると全員が声のした方へと振り向いた。

「ぶ、ブラッド!」
 
ブラッドと呼ばれた男の子の姿を見たクロードさんは、焦ったように慌てて彼に近づいて抱き上げた。
 
僕はそんな抱き上げられるブラッドさんの様子を伺った。
 
ブラッドさんは風邪でも引いているのか、顔は真っ赤で息遣いも荒いように見えた。

意識も朦朧としているのか、手探りの状態でクロードさんの顔を探していた。

「ブラッド。いったいどうしたんだ? 寝てなくちゃ駄目じゃないか」

「怖い……夢……見た。黒い……何かが……俺を飲み込もうとして……」
 
ブラッドさんは目尻に涙を浮かべると、クロードさんに助けをこうように泣き始める。

そんなブラッドさんの髪を優しく撫でながら、クロードさんはブラッドさんを抱き抱えたまま、部屋から出て行った。