ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

その姿に緊張した僕は思わず身構えてしまった。

しかしクロードさんは、そんな僕を気にすることなく、そっと自分の右手を僕の頭の上に置いた。

「えっ……」
 
そのことにびっくりした僕は、恐る恐るクロードさんの顔を見上げた。

「その様子だと、まさか自分たちの事を手紙で伝えられているなんて思っていなかっただろ?」

「あ……まあ、……そうですね」
 
僕の言葉にクロードさんは申し訳なさそうに深々と溜め息を吐いた。

「俺の弟が悪かったな。でもあいつはいつも手紙の中では、お前たちの事を大切な僕の息子娘たちって言って、自慢していたんだぞ? だから自分はクラウンの子供だって胸を張ったって良い。それにクラウンの息子なら、俺の息子も同然だからな」
 
そう言ってクロードさんは歯を見せて笑った。

そして同時にやっぱりこの人も、クラウン様と同じなんだと思えた。
 
性格や雰囲気は全然クラウン様には似ていないけど、でもやっぱりクラウン様に似ていると思った。

「お父様。誰か来たんですか?」

「っ!」
 
するとフィエリアさんの後ろに、こちらの様子をじっと見てきている小さな女の子の姿が、僕の目に飛び込んできた。
 
クロードさんは僕から手を離すと、フィエリアさんの後ろに居る女の子を抱き上げた。

「紹介するよ、アルファ。この子はセシル。俺たちの大事な娘だ」

「……っ」
 
クロードさんに抱き上げられたセシルは、少し恥じらうように頬を染めると、緑色の瞳に僕の姿を映した。

「お、お父様。下ろしてください」

「どうした? いつもだったらそんなこと言わないのに」

「あ、挨拶、したいのです」
 
セシルのその言葉にクロードさんは優しく微笑むと、そっとセシルを地面に下ろした。

するとセシルはそのまま、僕の目の前まで走って来た。

「げっ!」
 
その姿にビビった僕は数歩後退る。

しかしそんな僕をセシルは逃しまいと思ったのか、僕の服の裾を掴んだ。