ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「そう言えばクラウン様。今日は僕をどこに連れて行くんですか?」
 
これは前からずっと気になっていた。

どこに連れて行ってくれるのかと何度尋ねても、【当日までのお楽しみだよ】って言ってどこに行くのか全然話してくれなかった。
 
だから僕は今日の日を凄く楽しみにしていたと言うのに、クラウン様は寝坊するしで。

「今日はね、アルファに会ってもらいたい子が居るんだよ」

「会ってもらいたい子?」
 
クラウン様は着替えを終えると、とても優しい笑みを浮かべると言う。

「僕の大切な子供さ」

✩ ✩ ✩

街中を歩いて行きながら、僕とクラウン様は街の外を繋ぐ大門に向かっている。

そしてさっきからクラウン様は、気持ち悪いほどに周りに小花を飛びかせながら、満面な笑みを浮かべていた。
 
正直、こんなクラウン様を見るのは初めてだったし、この人の隣を歩いていると周りの目が気になって、今直ぐにでも赤の他人の振りをしたかった。

「ちょっと……クラウン様」

「ん? 何ですか、アルファ?」
 
我慢の限界だった僕は、怒りで体を震わせながら声を荒げる。

「さっきからその気持ち悪い笑顔やめろよ! 人の目が気になって仕方ないんだよ! 大体何でさっきからそんなに楽しそうなの?! そんなに大事な子に会えるのが嬉しいわけ?!」
 
これは僕のただの八つ当たりだった。

クラウン様の【大事な子】って言葉に、少なからず嫉妬していたからだ。

僕たち以外にも子供が居るなんて、そんなこと一言も言っていなかったのに……。

「……何ですか、アルファ? まさか嫉妬でもして居るんですか?!」

「べ、べべ別にそんなんじゃないですよ!」

「ふふっ、相変わらず可愛い子ですね。僕の息子は」

「う、うるっさいんだよ!」
 
クラウン様は顔を真っ赤にしながら怒っている僕に、優しい笑みを向けてくれた。

その笑顔を見たら怒っている事が馬鹿馬鹿しく思えてきて、僕は拗ねるようにそっぽを向いた。