ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「ちっ! このクソガキ!」

「うっ!」
 
男はご自慢の靴を僕の吐いた物によって汚されて苛立ったのか、お腹を抱えてその場でうずくまっている僕の体を、男は思い切り蹴り飛ばした。

「ふざけてんじゃねぇよ! このクソガキ! この靴どうしてくれんだよ!」
 
壁に思い切り背中を打ち付けた僕は、一瞬意識を飛ばしかけた。

しかし男はそれを許さなかった。

男は何度も僕のお腹に蹴りを入れて、僕に罵声を浴びせ続けた。

「死ね! 死ね! 死ね! このクソガキ! テメェがここに来たせいで、全部台無しじゃないか!」
 
その言葉を聞いて、母さんの言葉な脳裏を過ぎった。

「あんたなんか……生まなければよかった」
 
とても冷たい声で頭の中で囁かれた時、突然僕を蹴り続けていた男の体が横に飛んだ。

「のわぁぁっ!」
 
そして男はそのままゴロゴロと蹴られた石のように、勢い良く地面を転がった。

「あ、あなた?!」
 
女は慌てて男の元へ駆け寄って行く。

「……っ?」
 
一体何が起こったのか? ぎゅっと瞑っていた目を開けた時、僕の直ぐ側に人影があった。

「まったく……たかが靴を汚されただけだって言うのに、子供相手に容赦がない」
 
僕はゆっくりと顔を上げて、声の人物の顔を目に映した。

するとさっきまでの震えはどこかへ消え去り、代わりに温かい気持ちが心の中で広がった。

僕は泣くのを我慢しながら、掠れた声で言う。

「クラ……ウン」
 
名前を呼ばれたクラウン様は、優しい笑みを浮かべると僕を抱き上げてくれた。