「なあ、クラウン。僕はいつまでお前に付き合えば言いわけ?」

「まったく……アルファ。その乱暴な口調はやめなさいと、何度言ったら分かるんですか? 僕はそんな風に喋るように教育した覚えはないんだけど?」

「べっつに良いだろ! 僕がどんな風に喋ろうが僕の勝手だ。そんな事まで、あんたにとやかく言われる筋合いはない!」
 
まだ小さかった僕は、まだクラウン様を信用出来なかった事もあってか、かなり生意気な態度を取っていたと思う。

今ではこうして丁寧な口調で喋っては居るけど、たまに苛ついたりすると前の口調に戻る時はある。

「大体僕が付き合う必要ないと思うんだよね。たかが魔法書一冊買いに行くだけなのにさ。それだったらベータやガンマでも良かったと思うんだけど?」

「そんなことないですよ? 確かにベータやガンマでも良かったかもしれないけど、僕はみんなに街の事を知って欲しいんですよ」
 
クラウン様はそう言うと、街のあちこちに目を配った。

「この街や世界には、まだ君たちの知らない事がたくさんある。だから僕はそれを知ってほしい。だからまずは順番に、君たちに街を見せてあげようと思っているんだ」
 
そう言っていたクラウン様は、緑色の瞳を輝かせていた。

本当にこの人の探究心は凄まじいと言うか、なんというか……でも僕は――

「……今更街の事を知って……どうするって言うんだよ」

「アルファ?」
 
僕は怒りで体を震わせた。

今更こんな街を見せられたところで、僕が人に抱く感情は何一つ変わらない。

知らない事を知ったところで、一体何が変わるっていうんだ? 

知らない事を知ったところで、この世界に対する考え方が変わるわけでもない。
 
僕が人に抱く感情と、この世界に抱く感情はたった一つだけ。

それは……激しい恨みだけだ。

「僕の知らない事を知ったところで、一体何になるって言うんですか? また僕に、人が裏切られるところでも見せたいんですか?」