ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「はあ……はあ……っ」
 
徐々に上がっていく心拍数を落ち着かせるため、深く息を吸って深呼吸をする。

横になっていた体を起こして、震える体を抑え込もうと胸元にある星の涙に触れた。

「平気……大丈夫だから……あれは夢なのよ
 
そう……夢だと思いたいところだった。

しかし私は震える指先でそっと自分の唇に触れた。

「くっ……!」
 
まだ微かに残っているクラウンの熱を感じて、私はその場にうずくまるように膝を抱えた。

「ブラッド……」

あなたに会いたい……今直ぐ震える体を抱きしめてほしい。

手を取って【大丈夫だ】ともう一度言ってほしかった。

でも……彼の中に私の存在はもう居ない。

助けを求めても彼が来る事は二度とない。

絶対に――
 
そんなことを思いながら、私は溢れる涙を流しまいとぐっと堪える。
 
彼から離れて早三ヶ月。

私は何度後悔しただろう。

彼を守るために側を離れる覚悟を持って、お兄様と魔剣を集める旅に戻った。

でもやっぱりどこかで彼を求めてしまう自分が居た。
 
彼に触れたい、彼の温もりを感じたい、彼の隣に居たい――
 
でも……今更戻るわけには行かなかった。

もう後戻り出来ない場所まで私は来てしまった。

いや……彼の記憶を忘却してしまった時点で、私は帰る場所を失ったのだ。
 
だからこのまま旅を続けるしかなかった。

お兄様と一緒に魔剣を全て集めて、エアと守護者たちが交わした約束を果たして、あの世界で待っているトトを目覚めさせないといけない。
 
それがこの旅の終着点だ。
 
でも……もしやるべき事がすべて終わって、まだ私と言う存在がこの世界にあったなら、そのときはブラッドに会いに行こうと思っている。
 
もう一度彼と出会った時、今度はちゃんと意識がある時に言いたい。

自分の中にあるこの想いを、例えもう叶うことのない願いだとしても、それでも私は……あなたを【愛している】と伝えたいんだ。