【それだったら】と思った俺は、プレゼントする為に買ったドレスやワンピースを包装しようと手を伸ばした。

しかし伸ばし掛けたその手は、ドレス一歩手前で止められた。

「――っ」

何故か複雑な感情が俺の中で芽生えて、その事に顔を歪めながらそのまま右腕を下ろし、そっとクローゼットを閉めた。

もちろんドレスやワンピースはそのまま放置した状態だ。

何日か前の記憶を思い出した俺はそっと呟き思う。

「俺は……」
 
【何か大切な事を忘れているんじゃないのか?】と、そう思う度に小さな頭痛が俺の頭を襲った。
 
小さな頭痛に顔を歪め額に手を当て息を吐く。

「ま……良いか」
 
思い出せないってことは、きっと大したことでもないんだろうな。

そう思ってベッドから出て鏡の前に立った。
 
その拍子に窓から差し込む朝日が、首から下げられているネックレスの翡翠石を照らした。

その事に気づいた俺は、ネックレスを手に取り見下ろす。
 
これはあの戦いの後、目を覚ました時に首から下げられていた物だ。

誰が何を思って置いていったのか、まさか夢の彼女と関係がある物なのかなど、色々と考えてみたが答えは出ないままだ。

これもまたミリィの私物かと思って念のため聞いてみたが、【知らない! しつこい!】と言われてしまった。

だから本当の持ち主も未だ分からず、仕方なくこうして首から下げている。

もしかしたらこのネックレスの持ち主が、俺を見てこの存在に気づいてくれるだろうと思っていた。
 
しかしここ三ヶ月、このネックレスについて聞いてくる数人の女神たちは居たものの、これが自分の持ち主だと言ってくる人は一人もいなかった。

それにこの翡翠石は他の宝石とは少し違う輝き方をしていたから、念のためにギルに調べてもらったんだ。

そうしたらこの宝石が【守護石】だと言う事が判明した。