「私もお前と同じく諦めは悪い方なんだ。だからこの世界を壊そうとして居る奴を、見逃すわけにはいかない。それにイトとも話をしたい。なぜあいつがクラウンに拘っているのか、それには必ず理由があると思っている。あいつは……あの子は理由もなしに、こんな真似をする奴じゃないって私は知っているから」
 
私の言葉にアルとエクレールも頷いた。

しかしブラッドだけは、少し納得が行かないように複雑そうに表情を歪ませていた。
 
私から見たらブラッドの反応は当然の事だ。

イトと私たちは共に過ごした時間がある。

だからイトの考える事には納得が行くし、今回の事だって何か理由があるんだって思う事が出来る。
 
しかしブラッドは違う。

今のこいつにとってイトは、憎き敵であるクラウンの魔剣として映っている。

そして星の涙の欠片を奪っていき、オフィーリアを殺した人物としても見られているだろう。

そんな奴を今直ぐに信じるなんて無理な話だ。

だからブラッドには、直接イトと会話を交わしてもらいたい。

その後で、イトをどうするのかはブラッドが決めれば良いことだ。

「ブラッド。私はお前にこの力を貸す。だが、さっきも言った通り、私の氷結の力はコントロールする事が難しい。最悪、この力に飲み込まれる可能性だってある。それでも、お前は私の力を使うのか?」
 
これは最後の確認だった。

この力に飲み込まれる恐怖を知っている私だからこそ、それを受け入れる覚悟があるかどうか確認をしたかった。

生半可な覚悟でこの力を貸すわけには行かないからだ。

最悪、この力を使ってしまったら死ぬかもしれないんだ。

そうなってしまったら、彼女を生き返らせることなんてまず無理だ。

死んでしまったら、もう何をする事も出来ないのだから。

「別に力に飲み込まれたって構わねぇよ」

「っ!」
 
その言葉に私は目を見張った。

アルやレーツェルもブラッドの言葉に驚いた顔を浮かべた。

この場に居る誰もが、この男がそんな事を言うとは思ってもいなかった。

「お、お前……本気で言っているのか! この力に飲み込まれたら死ぬことだってあるかもしれないんだぞ!」

「今更死ぬことを怖がってどうするんだよ」

「……っ」
 
ブラッドはそう言うと顔を伏せた。