ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

そう言って出て行こうとするミカエルを睨みつけながら、私は凍りついている床に手のひらを当てる。

すると氷の薔薇の荊棘たちが、ミカエルの体を拘束しようと巻き付く。

しかしミカエルはそんな荊棘たちに指先で触れると、一瞬にして氷の荊棘たちを粉々にしてしまった。

「なっ……」
 
まただ。

こいつは私の目には見えない力を使って、私の魔法を跳ね返した。

絶対零度の時だって、この男はただその場に立っていただけで、魔法を発動しているようには見えなかった。

一体この男は何者なんだ?

「私に君の魔法は効きませんよ。そんな無駄に魔力を消費する暇があったら、少しでも氷結の力を自分でもコントロール出来るようにしたらどうですか?」
 
私はその言葉を聞いてミカエルをギロリと睨みつけた。

しかしミカエルは怯むどころか、ニコニコと笑顔を浮かべたまま、部屋から出て行ってしまった。

「……ほんとに、薄気味悪い笑顔だな」
 
そんなミカエルとのやり取りを思い出した私は、ブラッドに問いかける。

「お前は魔人族の生き残りが居るって、そう思っているのか?」

「……ああ。俺はそう信じている。じゃなきゃ、こんなこと普通は言わないだろ」

「……確かにそうだな」
 
もしミカエルの魔の手から逃れる事が出来た魔人族が居るのだとしたら、まだリヴァイバルとエクレールの願いを守ってあげる事が出来る。

二人が望んだ未来を叶えてやれる。だったら私は……。

「分かった。その案、乗ってやる」

「い、良いのか? 自分で言っては何だけど、成功する保証なんてどこにもないんだぞ?」

「ああ、そうだな。本当だったらそんな無謀な事しないで、彼女の分まで幸せに生きる道を選択してくれって言うところだ。だがお前は、私の力を求めてここへやってきた。つまりそれは諦めていないからってことだろ?」
 
この男に付いていけば、他の守護者に出会う事は必然になって来る。

きっとコスモにも会える。

しかしこの場に居る私たちが、この男をトトして認めていたとしても、他の奴等がブラッドをどう思うかは分からない。

コスモやマールだったら簡単にブラッドの事を認めてくれるかもしれないが、エクレールやラグはどうだろうか? 

それにリヴァイバルも……。

だが現状この男を除いては、誰も私たちに目を掛けてはくれない。

誰もが私利私欲のために私たちの力を利用するに違いないのだから。