ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「誰かを傷つける、誰かを悲しませる、誰かを怒らせる、誰かを笑顔にさせる、そして誰かを愛する、その全ての物は俺たちや人間族だけとは限らない。他の種族だってみんな同じだ。みんな同じで、だからこそ手を取り合ってこの世界をよりよい物にしていく事が出来る。俺はエルと一緒に、いつかそんな世界が訪れる事を望んでいる。誰もが種族や血に囚われることなく、心から愛した者と共に未来へ歩んで行ける世界を、俺はこの目で見てみたい。そしていつか、俺とエルのように人間族と魔人族としてではなく、同じ人として手を取り合って行けたら良いと思っている」
 
あの時のリヴァイバルの言葉を思い出した私は、悔しい気持ちで拳に力を込めた。
 
すまない……リヴァイバル、エクレール。

お前たちが願っていた未来を、叶えてやる事が出来なかった。

私がもう少し早く目覚めていればこんなことには……。

「誰よりも人間族を愛していた魔人王……ですか。ふっ……それはとっても笑える冗談ですね」

「なっ!! 私は冗談で言っているんじゃない! 本当の事を言っているだけだ!」
 
なぜこの男は魔人族を憎んでいる? 

どうしてリヴァイバルの事を悪く言う? 

一体何がこの男の憎悪を膨らませていると言うんだ?

「私もあなたと同じ本当の事を言っただけですよ? 確かにあの男は人間族を愛していたかもしれない。それはあの男の側に居たエクレール様が証明している。しかし彼はエクレール様を愛していただけで、人間族の事なんてどうでも良かったんじゃないですか?」

「そんなこと……あるはずないだろ! あいつは言っていた。いつか自分たちのように、人間族と魔人族としてではなく、一人の人としてお互いに手を取り合って行けたら良いと、そう言っていたんだ。そう言っていたあいつが、人間族の事をどうでもよく思っているわけないだろ!」
 
私の言葉にミカエルはヤレヤレとでも言うように深々と溜め息を吐くと、私に背を向けて出て行こうとする。

「ま、待てよ! まだ話しは終わっていないぞ!」

「いいえ、君とはこれ以上お話しをしても無駄だと言うことが分かりました。なので、今日はこの辺りで失礼させてもらいます」